景観と非選択的殺虫剤が露地栽培ナスの捕食性天敵ヒメハナカメムシ類Orius spp.(カメムシ目: ハナカメムシ科)の個体数に与える影響

奈良県の4地域にある13カ所の露地ナス圃場において,ナスの害虫類に対する有効天敵として知られるヒメハナカメムシ類Orius spp.の調査を行い,ヒメハナカメムシ類の個体数に対する周辺景観と圃場管理の影響を解析した。周辺景観については地理情報システムを用いて,調査圃場の中心から半径100~1,000mの範囲で100m間隔の円形バッファーを発生させ,各バッファーに含まれる土地利用面積を定量化した。応答変数をヒメハナカメムシ類個体数,説明変数を景観要素(主成分分析による第一主成分),景観異質性(土地利用に関する多様度指数: シンプソン指数)および非選択的殺虫剤の使用回数とする一般化線形モデルを構築...

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Published inNihon Ōyō Dōbutsu Konchū Gakkai shi Vol. 60; no. 4; pp. 171 - 178
Main Authors 馬場, 友希, 田中, 幸一, 竹中, 勲, 國本, 佳範
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 01.11.2016
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ISSN0021-4914
DOI10.1303/jjaez.2016.171

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Summary:奈良県の4地域にある13カ所の露地ナス圃場において,ナスの害虫類に対する有効天敵として知られるヒメハナカメムシ類Orius spp.の調査を行い,ヒメハナカメムシ類の個体数に対する周辺景観と圃場管理の影響を解析した。周辺景観については地理情報システムを用いて,調査圃場の中心から半径100~1,000mの範囲で100m間隔の円形バッファーを発生させ,各バッファーに含まれる土地利用面積を定量化した。応答変数をヒメハナカメムシ類個体数,説明変数を景観要素(主成分分析による第一主成分),景観異質性(土地利用に関する多様度指数: シンプソン指数)および非選択的殺虫剤の使用回数とする一般化線形モデルを構築し,ヒメハナカメムシ類個体数に影響を及ぼす要因とその空間範囲を特定した。赤池情報量規準(AIC)に基づくモデル選択とモデル平均化の結果,周囲200m以内の景観要素がヒメハナカメムシ類の個体数に影響を及ぼすことが明らかになった。すなわち,周囲の森林面積が小さく,耕作地・市街地面積が大きい圃場ほどヒメハナカメムシ類の個体数が多かった。一方,非選択的殺虫剤の影響はみられなかった。本結果は,露地ナス圃場のヒメカメムシ類の個体数を維持する上で,周辺景観が重要であることを示すものである。
Bibliography:903625
ZZ00014825
ISSN:0021-4914
DOI:10.1303/jjaez.2016.171