ヒラメの生活史初期の生き残りとその加入機構に関する研究について
ヒラメの加入量水準を決める生態学的な要因を明らかにするために,異体類の初期生活史における,量的変動要因と発育段階や生態学的特徴に関する既往研究をレビューした。着底過程にある仔・稚魚期においては,底生期への変態を伴う劇的な生態学的変化に関連して着底完了後の年級群の豊度が決定される機構に関する研究は多かった。しかしながら,異体類における浮遊期と接岸輸送期における卵・仔魚の量的な生残過程はほとんど明らかにされていなかった。プレイスでは成育場における餌料生物の利用可能度などが,稚魚期の年級群の豊度や加入量の決定に強く影響する可能性が推測されていた。ヒラメでも九州西岸域で同様な推論がなされていた。また,...
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Published in | 水産研究・教育機構研究報告 no. 48; pp. 61 - 84 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
01.01.2019
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ISSN | 2432-2830 |
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Summary: | ヒラメの加入量水準を決める生態学的な要因を明らかにするために,異体類の初期生活史における,量的変動要因と発育段階や生態学的特徴に関する既往研究をレビューした。着底過程にある仔・稚魚期においては,底生期への変態を伴う劇的な生態学的変化に関連して着底完了後の年級群の豊度が決定される機構に関する研究は多かった。しかしながら,異体類における浮遊期と接岸輸送期における卵・仔魚の量的な生残過程はほとんど明らかにされていなかった。プレイスでは成育場における餌料生物の利用可能度などが,稚魚期の年級群の豊度や加入量の決定に強く影響する可能性が推測されていた。ヒラメでも九州西岸域で同様な推論がなされていた。また,着底過程における減耗が初期減耗全体に対して大きな比重を占める可能性が推測されていた。実際に,太平洋北部沿岸域における既往のデータを解析した結果,アミ類の豊度とヒラメ稚魚の豊度との間に有意な正の相関が見られた。また,同じ海域においてヒラメ稚魚期の量と加入量との間にも有意な正の相関関係が見出された。以上より,着底過程にあるヒラメ仔・稚魚期の生き残りをアミ類の豊度が規定しているとの仮説を立てた。また,太平洋北部沿岸域におけるヒラメの卓越年級群の発生には,ある一定の規模の仔魚の接岸輸送の成功と成育場における莫大なアミ類の出現とが合一(マッチ)することであるとの仮説を立てた。これらの知見の整理に基づき,国内全域におけるヒラメの量的変動に関わる生存戦略を明らかにするために,九州西岸域におけるヒラメ着底過程におけるアミ類の量的重要性を検証することを提案した。 |
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Bibliography: | ZZ20547884 926793 |
ISSN: | 2432-2830 |