P-25 顎骨中心性癌の2例 顎骨内嚢胞の癌化?
顎骨中心性癌の報告は近年, 増加しているが各施設における経験は決して多くはなく, 歯肉癌との鑑別で念頭に無いこともある. 今回, 歯肉粘膜表面に癌がみられ臨床的には歯肉癌とされたが, 画像診断学的には顎骨内嚢胞が潜在し癌化したと考えられた2例を経験してたので報告する. 症例1:66歳・男性. 1990年5月29日初診. 近歯科にて右側下顎第2大臼歯の抜歯後に腫脹し, 下歯槽神経の知覚異常も生じて来院. 同部には潰瘍形成と40mmの硬結を触れた. パノラマでは, 歯槽頂側の骨は消失して透過像は下顎角前方にみられる埋伏智歯に達していた. 智歯の前方では透過像は辺縁不整で癌の辺縁であったが, 後方で...
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| Published in | 歯科放射線 Vol. 43; no. suppl; p. 81 |
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| Main Authors | , , |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
日本歯科放射線学会
2003
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| Online Access | Get full text |
| ISSN | 0389-9705 |
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| Summary: | 顎骨中心性癌の報告は近年, 増加しているが各施設における経験は決して多くはなく, 歯肉癌との鑑別で念頭に無いこともある. 今回, 歯肉粘膜表面に癌がみられ臨床的には歯肉癌とされたが, 画像診断学的には顎骨内嚢胞が潜在し癌化したと考えられた2例を経験してたので報告する. 症例1:66歳・男性. 1990年5月29日初診. 近歯科にて右側下顎第2大臼歯の抜歯後に腫脹し, 下歯槽神経の知覚異常も生じて来院. 同部には潰瘍形成と40mmの硬結を触れた. パノラマでは, 歯槽頂側の骨は消失して透過像は下顎角前方にみられる埋伏智歯に達していた. 智歯の前方では透過像は辺縁不整で癌の辺縁であったが, 後方では境界は明瞭かつ辺縁整で嚢胞に類似した所見であった. 下顎管は消失していた. 高分化型扁平上皮癌の診断で抗癌剤の投与後の同年6月22日, 右側下顎骨半側切除および全頸部郭清術, 大胸筋皮弁による再建術が施行された. 切除標本の病理報告では扁平上皮癌が下顎骨上部を広範囲に吸収して浸潤しているとのことであった. 嚢胞壁に関わるコメントはみられなかった. 症例2:46歳, 男性. 1994年8月3日初診. 以前から上顎歯肉部の腫脹と消退を自覚していたが, 再び腫脹し消退しないため近歯科を受診. 抗生剤を投与されたが症状に変化がみられないため来院. 上顎歯肉正中部を中心に右側犬歯から左側犬歯にかけて辺縁が堤防状に膨隆した深い潰瘍形成と硬結がみられた. 上唇小帯は崩れた状態で, 口蓋側には正常粘膜に覆われる膨隆がみられた. 臨床的に歯肉に癌があるが, 潰瘍の深部に癌組織が欠如しており通常の癌巣ではなかった. デンタルでは左右対称的に広がる透過像がみられ, 境界は一部を除くと比較的明瞭であった. CTでは, 透過像が存在する部位に軟組織はみられず空気のみが存在し嚢胞様であった. 生検により中分化型扁平上皮癌と診断され術前化学療法と外照射が施行された. 同年9月20日, 上顎部分切除, 右側上頸部, 左側全頸部郭清術および中間層植皮術が施行された. 切除標本の病理報告では, 上皮下結合組織内に扁平上皮癌の残存がみられるとのことであった. 嚢胞壁に関するコメントはみられなかった. まとめ:画像的には, 症例1は含歯性嚢胞の, 症例2は鼻口蓋管(切歯管)嚢胞の癌化例と思われた. |
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| ISSN: | 0389-9705 |