10 Multi-locus sequence typing法による国内野生鳥類由来ボレリアと北海道患者由来ボレリアの遺伝子型別解析

国内生態系内におけるライム病病原体拡散と疾患の発生リスクを明らかにすることを主目的とし, 以下研究を行った. 病原体拡散に関するリスク因子として, 鳥類の移動に焦点を当て研究を行った. 鳥類の捕獲は31都道府県で行い, 鳥類60種よりマダニ1463個体を得た. シュルツェマダニ(29.0%), アカコッコマダニ(16.4%), およびキチマダニ(28.8%)が主な鳥類寄生マダニとして同定された. また, 病原体検索を行ったマダニ1337個体中, 106個体(7.9%)でボレリアDNAが検出された. この内, ライム病病原体Borrelia gariniiが65.1%であったことから, 鳥類の移...

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Published inMedical Entomology and Zoology Vol. 61; no. 2; p. 153
Main Authors 川端寛樹, 武藤麻紀, 高野愛, 小笠原由美子, 藤田博己, 鶴見みや古, 増沢俊幸, 宮本健司, 渡邉治雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本衛生動物学会 15.06.2010
The Japan Society of Medical Entomology and Zoology
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ISSN0424-7086

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Summary:国内生態系内におけるライム病病原体拡散と疾患の発生リスクを明らかにすることを主目的とし, 以下研究を行った. 病原体拡散に関するリスク因子として, 鳥類の移動に焦点を当て研究を行った. 鳥類の捕獲は31都道府県で行い, 鳥類60種よりマダニ1463個体を得た. シュルツェマダニ(29.0%), アカコッコマダニ(16.4%), およびキチマダニ(28.8%)が主な鳥類寄生マダニとして同定された. また, 病原体検索を行ったマダニ1337個体中, 106個体(7.9%)でボレリアDNAが検出された. この内, ライム病病原体Borrelia gariniiが65.1%であったことから, 鳥類の移動に付随して, 特定のマダニ種とこれを媒介種とする病原体種が国内生態系内で拡散している可能性が示唆された. 次いで, 北海道で報告されたライム病患者由来分離株と本研究で見いだされた鳥類による移動が推定されたボレリアについてMulti-locus sequence typing法による型別解析を行った. その結果, 患者由来株の一部は鳥類によって拡散していることが明らかとなった. 今後は, 鳥類の移動(渡り)経路と, 鳥種, 寄生マダニ種, および病原体種との関連をさらに検討するとともに, 公衆衛生に対する情報還元を計りたい. 研究協力者:安藤秀二, 坂田明子, 佐藤文男, 仲村昇, 尾崎清明, 田原研司, 山内健生, 角坂照貴, 全国の鳥類標識調査員
ISSN:0424-7086