8.神経疾患,特に脳性麻痺の末梢運動神経伝導速度について

目的:正常児(者), 脳性麻痺児の末梢運動神経伝導速度について調べ, また冷房病の病態を知る目的で, 身体冷却による神経伝導速度への影響についても検索した. 方法:正常児, 脳性麻痺をはじめとする各種の神経疾患, 合計258人を対象に, メデレック社製の筋電計MS-7を用いて, 主に脛骨神経について調べた. 神経刺激は, 持続時間0.3msec, 電圧はsupramaximalが得られる80~150ボルト, 1秒1回の矩形波によった. 皮膚温度は貼付型表面温度計を用い, 尺骨神経では尺骨神経溝のやや遠位部, 脛骨神経では膝窩部にて測定した. 結果:(1)正常児の脛骨神経伝導速度は, 2歳までは...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 21; no. 5; p. 308
Main Authors 川口幸義, 穐山富太郎, 岡本義久, 山口和正, 朝長匡
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 18.09.1984
社団法人日本リハビリテーション医学会
The Japanese Association of Rehabilitation Medicine
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ISSN0034-351X

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Summary:目的:正常児(者), 脳性麻痺児の末梢運動神経伝導速度について調べ, また冷房病の病態を知る目的で, 身体冷却による神経伝導速度への影響についても検索した. 方法:正常児, 脳性麻痺をはじめとする各種の神経疾患, 合計258人を対象に, メデレック社製の筋電計MS-7を用いて, 主に脛骨神経について調べた. 神経刺激は, 持続時間0.3msec, 電圧はsupramaximalが得られる80~150ボルト, 1秒1回の矩形波によった. 皮膚温度は貼付型表面温度計を用い, 尺骨神経では尺骨神経溝のやや遠位部, 脛骨神経では膝窩部にて測定した. 結果:(1)正常児の脛骨神経伝導速度は, 2歳までは急速に早くなり, 3~5歳でほぼプラトーに, 以後, 成人にいたるまで一定であった. (2)正常児と脳性麻痺児とで, 尺骨神経, 脛骨神経の神経伝導速度には有意差を認めなかった. (3)脳性麻痺のタイプ別では, アテトーゼ型では正常, 痙直型では平均値はやや遅い傾向にあったが有意差はなく, また片麻痺の健側と患側との比較でも, 神経伝導速度に有意差はみられなかった, (4)Charcot-Marie-Tooth病, Friedreich病, 脚気で神経伝導速度の遅れが認められた. (5)脳性麻痺の末梢運動神経伝導速度では有意差を認めないが, supramaximalを得る電圧は, 正常児に比べて高い電圧を要し, 脳性麻痺児の末梢運動神経では閾値の上昇を認めた. (6)30~45分間, 大型冷蔵庫に入って, 皮膚温, 潜時, 神経伝導速度の変化を調べたところ, 比較的短時間の冷却にもかかわらず, その影響は意外に長く残り, それらがもとの値に回復するまでには, 入庫していた時間の2~4倍の長時間を要していた. 答 川口幸義:(1)アテトーゼ型で, 合併症状を有するもの(例えば, 頸椎症を合併して神経症状を有するものは除外した)は, 今回の研究では居ませんでした. (2)大型冷蔵庫での実験は, 正常人について行ったので, 脳性麻痺について述べることはできません. ただし, 脳性麻痺では, 冬に凍傷が多いのは事実で, 自律神経系の機能障害は充分ありうるものと考えます.
ISSN:0034-351X