3. 片麻痺者の肩の痛みについて

片麻痺患者の麻痺側の肩の痛みにつき, その調査を行い, 種々の因子との関連を検討した. 対象は, 昭和62年1月の時点で七沢リハ病院入院患者80名を無作為に選び, 肩の痛みの程度や発症後期間など16項目について調査した. 痛みの程度を4段階に分類し, 各項目との関連について, 統計学的検討を加え, さらには, 多変量解析も行った. その結果, 肩の痛みの程度と関連が認められたのは, 発症後期間, 上肢の痙性, 手背の浮腫, 肩関節可動域の屈曲および外転, 上肢および手指機能であった. 発症後期間は3ヵ月以内と13ヵ月以上では重度の痛みは認められなかった. 上肢の痙性および手背の浮腫では, 程度...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 24; no. 6; p. 356
Main Author 平井夏樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 18.11.1987
社団法人日本リハビリテーション医学会
The Japanese Association of Rehabilitation Medicine
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ISSN0034-351X

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Summary:片麻痺患者の麻痺側の肩の痛みにつき, その調査を行い, 種々の因子との関連を検討した. 対象は, 昭和62年1月の時点で七沢リハ病院入院患者80名を無作為に選び, 肩の痛みの程度や発症後期間など16項目について調査した. 痛みの程度を4段階に分類し, 各項目との関連について, 統計学的検討を加え, さらには, 多変量解析も行った. その結果, 肩の痛みの程度と関連が認められたのは, 発症後期間, 上肢の痙性, 手背の浮腫, 肩関節可動域の屈曲および外転, 上肢および手指機能であった. 発症後期間は3ヵ月以内と13ヵ月以上では重度の痛みは認められなかった. 上肢の痙性および手背の浮腫では, 程度がひどくなるにつれて重度の痛みをもつ者が多かった. また肩関節可動域の屈曲および外転では, 制限の強い者は重度の痛みを有する者が多く, 制限の少ない者では, 痛みのない症例が増加していた. 最後に上肢および手指機能では, Br.stageの低い者で重度の痛みを有する者が多く, ステージがよくなるにつれて重度の痛みは減少した. その他の項目では, 痛みの程度との関連は認められず, 多変量解析によっても項目間の関係を明らかにすることはできなかった. 今後は症例数の増加や調査項目の拡大, 調査項目のカテゴリーの検討を行い, 片麻痺の肩の痛みに対する症状の分類からのアプローチによる予防 治療の方法を求めていきたいと考えている. 質問 国立東京第2病院 加藤哲也:治療法別に痛みの発生頻度に差があったらお知らせください. 例えばROM exerciseがプーリーによるものとPTによるものとに差がありましたか. 答 平井夏樹:治療と肩の痛みの程度の関連について, 今回は検討しておらず, 今後は訓練や治療法との関連も含めて検討を加えていきたい.
ISSN:0034-351X