NO.2 LIFはPax5欠損プロB細胞および造血幹細胞のT細胞への分化能をex vivoで維持することができる

Pax5はB細胞への分化に必須な様々な分子の転写を促進するだけでなく, B系列以外のさまざまな系列の細胞への分化に必要な分子の転写を積極的に抑制していることが知られている. このPax5遺伝子を欠損したプロB細胞は, プロB細胞としての性質を持ちながらもT細胞をはじめとするB細胞以外のほぼ全ての系列の血液細胞へと分化する能力を持っており, 造血幹細胞に最も近い培養細胞であると考えられる. 我々はLeukemia Inhibitory Factor(LIF)がこの細胞の多分化能をin vitroで長期間維持させる作用を持つことを発表した. 一旦分化能力を失ったプロB細胞に再度LIFを作用させても...

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Published in山口医学 Vol. 54; no. 6; p. 188
Main Authors 小田浩代, 鈴木春巳, 馬場由香里, 酒井幸平, 北原誠司, 白崎友彬, 白井睦訓
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 山口大学医学会 31.12.2005
Yamaguchi University Medical Association
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ISSN0513-1731

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Summary:Pax5はB細胞への分化に必須な様々な分子の転写を促進するだけでなく, B系列以外のさまざまな系列の細胞への分化に必要な分子の転写を積極的に抑制していることが知られている. このPax5遺伝子を欠損したプロB細胞は, プロB細胞としての性質を持ちながらもT細胞をはじめとするB細胞以外のほぼ全ての系列の血液細胞へと分化する能力を持っており, 造血幹細胞に最も近い培養細胞であると考えられる. 我々はLeukemia Inhibitory Factor(LIF)がこの細胞の多分化能をin vitroで長期間維持させる作用を持つことを発表した. 一旦分化能力を失ったプロB細胞に再度LIFを作用させてもT細胞への分化能は回復しなかったことから, LIFは直接T細胞系列への分化を促進するというよりは, 未分化細胞におけるT系列への分化能力を維持させる作用があるものと考えられた. LIFはストロマ細胞およびプロB細胞の両方を刺激してSTAT3の活性化を引き起こしたため, LIFの効果はストロマ細胞を介した間接的な作用である可能性も考えられた. また, Pax5欠損プロB細胞だけでなく, マウス骨髄から得た造血幹細胞(Scal陽性細胞)のT細胞分化能もLIFによって維持されることが明らかとなった. LIF添加培養によって発現が変化した遺伝子をマイクロアレイを用いて解析し, この未分化能の維持に関わる分子機構を現在検討している.
ISSN:0513-1731