いじめを生む社会

私が所属している京都大学霊長類研究所は, 基本的にサルの研究をしているところです. サルの研究をしている人間が, 人間の問題について, 一体何を言えるのかとお考えかもしれませんが, サルを見ているからこそ人間のユニークさがわかるという面もあるのです. 人間が人間を見ているだけでは, 一体どこが人間のユニークな点かというのは自明性の中に埋もれてしまってわからない. ところがサルを見ていると, 人間はこんなところがすごくユニークなのだなとわかる点があります. われわれ, 認知科学をやっている人間から見て, 一体人間とサルとどこが違うのか. これが形態学者でしたら, サルは四つ足で歩くけれども人間は...

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Published inこころの健康 Vol. 23; no. 1; pp. 11 - 16
Main Author 正高信男
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本精神衛生学会 30.06.2008
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ISSN0912-6945

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Summary:私が所属している京都大学霊長類研究所は, 基本的にサルの研究をしているところです. サルの研究をしている人間が, 人間の問題について, 一体何を言えるのかとお考えかもしれませんが, サルを見ているからこそ人間のユニークさがわかるという面もあるのです. 人間が人間を見ているだけでは, 一体どこが人間のユニークな点かというのは自明性の中に埋もれてしまってわからない. ところがサルを見ていると, 人間はこんなところがすごくユニークなのだなとわかる点があります. われわれ, 認知科学をやっている人間から見て, 一体人間とサルとどこが違うのか. これが形態学者でしたら, サルは四つ足で歩くけれども人間は直立二足歩行をすると答えるかもしれません. 認知科学の面から見て, 人間とサルのいちばん大きな違いとは, こういうことです. 学習という面から見ると, サルも高等なサルだと非常に複雑な学習をするのですが, 人間の学習とサルの学習における根本的な違いは, 学習を行う上で報酬となるものの質が違うということなのです.
ISSN:0912-6945