7. 頸髄損傷者の妊娠・分娩
頸髄損傷者の妊娠.分娩の2例を経験したので症例の紹介とともに, 妊娠.分娩の問題点について述べる. 女性の脊髄損傷の性機能について, 月経は受傷6ヵ月以内に再開し不順となることもなく, 受精もホルモン依存性が高いので特に障害はない. 妊娠中, 貧血は低蛋白血症とあいまって胎児発育障害, 褥瘡の要因ともなり, また貧血に対する鉄剤の授与は便秘を増強させる. 胎児発育に伴い横隔膜の圧迫による呼吸障害, 運動量の低下, 静脈圧迫による静脈血栓症の危険もある. 膀胱圧迫による尿停留は尿路感染症を生じ, 安易な留置カテーテルは尿道に褥瘡を生じることとなる. 尿路感染にはプロゲステロンなどホルモンの関係も...
Saved in:
| Published in | リハビリテーション医学 Vol. 23; no. 4; pp. 184 - 185 |
|---|---|
| Main Authors | , , |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
日本リハビリテーション医学会
18.07.1986
社団法人日本リハビリテーション医学会 The Japanese Association of Rehabilitation Medicine |
| Online Access | Get full text |
| ISSN | 0034-351X |
Cover
| Summary: | 頸髄損傷者の妊娠.分娩の2例を経験したので症例の紹介とともに, 妊娠.分娩の問題点について述べる. 女性の脊髄損傷の性機能について, 月経は受傷6ヵ月以内に再開し不順となることもなく, 受精もホルモン依存性が高いので特に障害はない. 妊娠中, 貧血は低蛋白血症とあいまって胎児発育障害, 褥瘡の要因ともなり, また貧血に対する鉄剤の授与は便秘を増強させる. 胎児発育に伴い横隔膜の圧迫による呼吸障害, 運動量の低下, 静脈圧迫による静脈血栓症の危険もある. 膀胱圧迫による尿停留は尿路感染症を生じ, 安易な留置カテーテルは尿道に褥瘡を生じることとなる. 尿路感染にはプロゲステロンなどホルモンの関係もある. 分娩に際しては, 陣痛開始予知困難により自宅分娩の可能性もあるが, 陣痛自体が弱いことはないようである. 妊娠, 分娩, 産褥を通じての自律神経過反射, 特に陣痛に伴う高血圧発作は特に注意すべきであり, 薬物, 麻酔の準備など用意周到な計画分娩が必要であり, 妊娠32週で入院管理を行うべきとの意見もある. 一般には, 脊髄損傷者の分娩も経腟的に行うべきであり, 帝王切開は純粋に産科学的適応に限るとされるが, 挙児熱望, Fetal distressの可能性, 自律神経過反射などの合併症を考えるとき, 帝王切開の適応基準は甘くならざるを得ないだろう. 質問 新潟大 佐藤 豊: 第2例目は妊娠前に叩打手圧排尿を行っていますが, 妊娠後は排尿方法を変えましたでしょうか. 例えば自己導尿などとするか? (2) 私たちも対麻痺者で, 第1子を経腟分娩したが, 分娩後出血が多く, 第2子を妊娠したが, 結局産科で第2子の出産は危険とのことで人工流産となってしまった. このような場合, 帝王切開すれば安全かと考えますが, 何かアドバイスをいただけますか. 答 吉村 理: 脊損者の分娩は, 挙児熱望, 各種合併症を考えるとき, 帝王切開の適応は甘くならざるをえないと考えます. 質問 神奈川リハ病院 宮崎 一興: 第1例の自己導尿は妊娠末期にはどのようにしていたか. 分娩時の高血圧は子宮収縮をtriggerとした自立神経過反射と考えられるか. 答 吉村 理: (1) 分娩時の血圧上昇は, 自律神経過反射と考えます. 血中のカテコールアミンで, ノルアドレナリンの上昇をみました. (2) 妊娠末期は, 介助者による間歇導尿を行いました. |
|---|---|
| ISSN: | 0034-351X |