医事紛争の最近の傾向

「I はじめに」「医事紛争」とは, 「医療事故」あるいは「医療事故と誤認」されることにより, 患者さん側と医療者側との間に齟齬が生じ人間関係が拗れることである. 「医療事故」とは, 医療行為の過程において予期しなかった有害事象が発生し, 患者さんに何らかの侵襲を来したことをいう. しかしながら, 医療には不可抗力や医師でさえ予見できない事象が多く, これ自体では必ずしも医療者側の賠償責任が問われるとは限らない. また「医療過誤」とは, 「医療事故」の原因が医療者側の診療上の注意義務違反等により発生する有害な事象であり, 一定の医療水準の下では予見が可能で, より慎重にすれば避けることが可能であ...

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Published in日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 119; no. 5; pp. 771 - 775
Main Author 鈴木賢二
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本耳鼻咽喉科学会 20.05.2016
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ISSN0030-6622

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Summary:「I はじめに」「医事紛争」とは, 「医療事故」あるいは「医療事故と誤認」されることにより, 患者さん側と医療者側との間に齟齬が生じ人間関係が拗れることである. 「医療事故」とは, 医療行為の過程において予期しなかった有害事象が発生し, 患者さんに何らかの侵襲を来したことをいう. しかしながら, 医療には不可抗力や医師でさえ予見できない事象が多く, これ自体では必ずしも医療者側の賠償責任が問われるとは限らない. また「医療過誤」とは, 「医療事故」の原因が医療者側の診療上の注意義務違反等により発生する有害な事象であり, 一定の医療水準の下では予見が可能で, より慎重にすれば避けることが可能であったものを示している. この過失によって患者さん側に損害が生じた場合には, 「医療過誤」として医療者側に賠償責任が発生するのである. われわれ医療者は「医事紛争」, 「医療事故」, 「医療過誤」をはっきり区別して理解し, 混同してはならない.
ISSN:0030-6622