作品展『ちょっとみ展』がもたらした影響

【はじめに】 当院では患者さんのことをゲストと呼ばせていただいていることをご了承ください.今回,ゲストに対して自己有能感の獲得,満足できる日課をもつことを目標に,筆ペンを使用しての絵画,書字を提供し,作品展『ちょっとみ展』を開くこととした.この作品展を通して本人の意志,習慣化,遂行,環境の変化と,他職種のゲストに対する意識,関わりの変化を調査した.このことから得られた事を検討し考察を報告する.なお,本研究はゲストへの説明と同意を得,当院の倫理委員会より承認を受けている.【ゲスト紹介】 80代男性,診断名は腹部大動脈瘤術後廃用症候群.既往として脳梗塞あり.BIは5点,FIMは33点,食事は胃瘻増...

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Published in九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 Vol. 2010; p. 383
Main Authors 下村 亮輔, 豊田 敬一, 中山 利美, 吉本 龍司, 鋤田 千穂, 柚木崎 雅志, 坂本 幸子, 黒木 尚美
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州理学療法士・作業療法士合同学会 2010
Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu
Subjects
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ISSN0915-2032
2423-8899
DOI10.11496/kyushuptot.2010.0.383.0

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Summary:【はじめに】 当院では患者さんのことをゲストと呼ばせていただいていることをご了承ください.今回,ゲストに対して自己有能感の獲得,満足できる日課をもつことを目標に,筆ペンを使用しての絵画,書字を提供し,作品展『ちょっとみ展』を開くこととした.この作品展を通して本人の意志,習慣化,遂行,環境の変化と,他職種のゲストに対する意識,関わりの変化を調査した.このことから得られた事を検討し考察を報告する.なお,本研究はゲストへの説明と同意を得,当院の倫理委員会より承認を受けている.【ゲスト紹介】 80代男性,診断名は腹部大動脈瘤術後廃用症候群.既往として脳梗塞あり.BIは5点,FIMは33点,食事は胃瘻増設し経管栄養,移動は電動車いすで見守り,寝返り,整容が一部できる程度.認知機能について,HDS-Rは20点,見当識は比較的良好.コミュニケーション手段は構音障害が重度で,自発話は「アー」程度.実用的手段は筆談となっている.自己排痰困難で吸引が必要な際に,ナースコールを押して要求することができる.【対象・方法】 ゲストに対しての満足度の変化については,作業に関する自己評価(以下OSA_II_)を用いた.他職種へのゲストに対する関わりの変化については,『ちょっとみ展』終了後に,質問紙調査を無記名方式で実施.調査対象は,担当PT,OT,ST以外の病棟スタッフで,調査内容は,ゲストへの声かけの頻度や内容に関するものとした.【経過】 ゲストの生活パターンはADLのほとんどをベッド上で過ごし,週三回の入浴とPT,OT,STの日々のリハビリ平均5単位以外は,自室で臥床して過ごしていた.リハビリに対して拒否はないがリハ終了後にはすぐに臥床を希望.書字,絵画を行うことで作業活動時間が長くなり,作業終了後には笑顔が見られるようになった.OSA_II_より本人が1番変化を望む項目は,「自分について」の21項目中では,自分の責任をきちんと果たすで,「環境について」の8項目中では,自分が行けて楽しめる場所であった.この評価結果より展示者としての役割,責任を持ってもらいゲスト自身も楽しめる場として,作品展を行うことを提案した.ゲストの同意を得,共に準備をすすめていった.【考察】 作業療法で提供している活動を,病棟内で作品展として発表する,環境を操作することで,ゲスト自身の満足度の変化だけでなく,病棟で働く他職種に対して,ゲストができること,病棟内での関わりだけでは見えにくいゲストの能力を知る機会になったのではないか,と考えられる.Kielhofnerは,「ある人の障害の範囲は,かなりの程度がその周辺環境からもたらされる」と述べている.ゲストや他職種の関わりが『ちょっとみ展』を通じてどのように変化したのか考察を加え発表する.
ISSN:0915-2032
2423-8899
DOI:10.11496/kyushuptot.2010.0.383.0