免荷式歩行器(POPO)での歩行訓練による、歩行速度の変化

【目的】我が国は世界のどの国も経験したことのない高齢化社会を迎えることが予測されている。高齢化社会へ対する取り組みには医療,栄養,生活習慣などの側面から複数の提案がなされており,その中でも身体活動量の増加はロコモティブシンドロームなどの加齢に伴う生活機能の低下リスクを低減できる可能性が示唆されている。今回はロコモティブシンドロームに対する様々な取り組みの中で,リハビリ分野でも有効性が示唆されているリハビリロボットに注目した。免荷式歩行リフトPOPO(以下,POPO)を用いた先行研究では、日常生活動作が改善した一症例も様々な疾患で報告されている。しかし,ロコモティブシンドロームとみられる複数の症...

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Published in九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 Vol. 2016; p. 62
Main Authors 田中 啓太, 平田 敦志, 野元 域弘
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州理学療法士・作業療法士合同学会 2016
Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu
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ISSN0915-2032
2423-8899
DOI10.11496/kyushuptot.2016.0_62

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Summary:【目的】我が国は世界のどの国も経験したことのない高齢化社会を迎えることが予測されている。高齢化社会へ対する取り組みには医療,栄養,生活習慣などの側面から複数の提案がなされており,その中でも身体活動量の増加はロコモティブシンドロームなどの加齢に伴う生活機能の低下リスクを低減できる可能性が示唆されている。今回はロコモティブシンドロームに対する様々な取り組みの中で,リハビリ分野でも有効性が示唆されているリハビリロボットに注目した。免荷式歩行リフトPOPO(以下,POPO)を用いた先行研究では、日常生活動作が改善した一症例も様々な疾患で報告されている。しかし,ロコモティブシンドロームとみられる複数の症例に対して免荷歩行訓練を行った報告はまだない。今回の研究では,ロコモティブシンドロームに該当する7例の症例を対象とし,症例に対しPOPOを用いた歩行訓練を行う事で,要介護高齢者において日常生活動作能力と強い関連を示すとされている歩行速度に優位な改善がみられるかを調査した。【方法】対象はロコモティブシンドロームに該当する7名の当施設在所者を対象とした。対象者の内訳は,男性1名,女性6名,平均年齢85.29±8.22歳,平均身長158.09±8.99cm,平均体重は51.25±4.88kg,BMIは23.49±2.91,介護度は要介護1が2名,要介護2が2名,要介護4が3名であった。測定は合計で3回行い,測定1はPOPO訓練期間前日,測定2は2週間期間のPOPO訓練期間最終日の翌日,測定3は測定2計測日の2週間後に計測した。歩行速度は6m間の歩行路を楽な速さで歩いた時の時間を計測し,これらの測定・評価は単一の理学療法士が行った。POPO訓練期間の介入内容は,POPOでの歩行訓練(以下POPO訓練)を週5回,1回につき約90秒×2の持続歩行訓練を行い,POPO歩行訓練時の免荷量は、本人の一番心地よいと感じる免荷量で行った。統計解析は対応のあるt検定を用い,有意水準はp<0.05とした。【結果】訓練期間前日23.38 ±12.85,訓練期間最終日の翌日20.37±11.11秒,訓練期間から2週間後21.83±13.87であり,歩行速度の変化に有意差を認めなかった。【考察】ロコモティブシンドロームに該当する高齢者7名を対象にPOPOによる免荷歩行訓練を行ったが、歩行速度の変化に有意差が認められなかった。有意差が得られなかった理由として,症例間で介護度や身体機能の差が大きかった事で歩行速度に大きなバラつきが生じた事が推察された。有意差がみられなかったもののPOPO訓練期間の前後で歩行速度に改善が得られた点に関しては,過去有効性が報告された免荷歩行訓練が場所固定で行われていたのに対し,POPO訓練は場所移動を伴う事から歩行感覚を認知面で体感しながら行えた事が大きく影響していたと推察される。先行研究では場所固定の歩行リハビリテーションシステムに視覚ディスプレイを取り入れた事でリラックス効果が得られたという報告もある。本研究では訓練場所が施設の廊下だった事から,訓練中に在所仲間の声掛けも多く対象者のモチベーションに好影響を与えていた。知的機能の低下予防に運動が関与してくるという報告がある事からも,今後は認知機能に障害を有するロコモティブシンドロームの症例に対しても介入の検討が必要と考える。【倫理的配慮,説明と同意】本研究の計画立案に際し,事前に所属施設の倫理審査員会の承認を得た(承認日平成28年4月4日)。また研究を実施に際し,対象者に研究について十分な説明を行い,同意を得た。製薬企業や医療機器メーカーから研究者へ提供される謝金や研究費,株式,サービス等は一切受けておらず,利益相反に関する開示事項はない。
ISSN:0915-2032
2423-8899
DOI:10.11496/kyushuptot.2016.0_62