急性期病院での歩行開始時期が回復期病院の転帰先に与える影響について

【目的】 2006年12月より当院は計画管理病院として大腿骨頸部骨折地域連携パス(以下、連携パス)運用を開始し、大腿骨頸部骨折のリハビリテーションを行っている。 当院ではクリニカルパスに沿って離床、部分荷重を進めているが、元々の日常生活動作能力低下や荷重理解不足の問題により歩行開始時期が遅れる症例がみられる。今回、当院における歩行開始時期の違いによる急性期、回復期での入院期間や転帰先等を調査し、連携パスにおける急性期病院の役割を検討した。【方法】 対象は2006年12月~2010年11月までに連携パスを使用した97名(男性21名、女性77名、平均年齢84.5±6.6歳)。術後14日目の時点で歩...

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Published in九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 Vol. 2011; p. 239
Main Authors 野口 義隆, 吉田 達郎, 北島 淳一, 阿部 隆伸
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州理学療法士・作業療法士合同学会 2011
Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu
Subjects
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ISSN0915-2032
2423-8899
DOI10.11496/kyushuptot.2011.0.239.0

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Summary:【目的】 2006年12月より当院は計画管理病院として大腿骨頸部骨折地域連携パス(以下、連携パス)運用を開始し、大腿骨頸部骨折のリハビリテーションを行っている。 当院ではクリニカルパスに沿って離床、部分荷重を進めているが、元々の日常生活動作能力低下や荷重理解不足の問題により歩行開始時期が遅れる症例がみられる。今回、当院における歩行開始時期の違いによる急性期、回復期での入院期間や転帰先等を調査し、連携パスにおける急性期病院の役割を検討した。【方法】 対象は2006年12月~2010年11月までに連携パスを使用した97名(男性21名、女性77名、平均年齢84.5±6.6歳)。術後14日目の時点で歩行を開始している群46名(以下、歩行群)と開始していない群51名(以下、未歩行群)に分類し、男女比、年齢、入院前の歩行可否、入院前の住居、既往疾患、HDS-R、当院での入院期間、転院前Barthel Index(以下、BI)、回復期病院での入院期間、回復期病院からの転帰先を比較した。統計学的処理は、χ2乗検定、対応のないt検定を用い、有意水準は5%未満とした。【結果】 入院前の住居(歩行群:自宅35名、自宅外11名、未歩行群:自宅36名、自宅外15名)では有意差を認めなかったが、回復期病院での転帰先(歩行群:自宅30名、自宅外16名、未歩行群:自宅22名、自宅外29名)では有意差を認めた(p<0.05)。 男女比、年齢、入院前の歩行可否、当院での入院期間(歩行群:30.3±6.9日、未歩行群:29.3±8.9日)、回復期病院での入院期間(歩行群:94.9±83.1日、未歩行群:97.5±63.5日)では有意差を認めなかった。 HDS-R(歩行群:19.3±7.5点、未歩行群:14.5±8.9点)、転院前BI(歩行群:52.0±14.6、未歩行群:30.5±17.0)では有意差を認めた(p<0.01)。また、既往疾患では、心疾患、整形疾患、呼吸器疾患では有意差を認めなかったが、糖尿病、脳血管疾患では有意差を認めた(p<0.05)。【考察】 歩行群が未歩行群より転院前BIが高く、回復期病院からの自宅退院も多かった。術後早期に歩行練習を開始することで、活動範囲が拡大し日常生活動作能力を改善させることができ、自宅退院率が高まったものと考える。歩行練習を開始できなかった要因としては、認知症による部分荷重理解不足や脳血管疾患等による動作能力の低下に加え、有意差を認めなかったが罹患率が高い循環器疾患や整形疾患により動作能力が低下していたことが考えられる。【まとめ】 患者様が元の生活を取り戻すために、急性期病院で認知症進行予防、リスク管理を行いながら、術後の早期歩行練習を開始し、廃用予防、日常生活動作能力向上に努め、回復期病院へとつなげていくことが急性期病院の役割と考える。
ISSN:0915-2032
2423-8899
DOI:10.11496/kyushuptot.2011.0.239.0