月経周期中間期 (midcycle) に血性排液を繰り返したCAPD患者の1例

症例は原疾患が糖尿病の34歳女性CAPD患者で, CAPD開始3か月目から月経と月経の中間期 (midcycle) に下腹部痛とともに血性の排液を繰り返した. いずれの時も腹膜炎の疑いで入院したが排液中に多形核白血球の増加を認めず, 菌も検出されなかった. CTおよびMRI検査にて左卵巣チョコレート嚢腫が発見されたためgonadotropine releasing hormone (GnRH) agonist剤であるbuserelinの鼻腔内投与 (600-1,200μg/day) 治療で4か月後には臨床症状は消失し, MRI像での腫瘍サイズも治療6か月後では著明に縮小していた. 以上のことか...

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Published in日本透析療法学会雑誌 Vol. 25; no. 12; pp. 1377 - 1381
Main Authors 坂本, 尚登, 秋葉, 隆, 河辺, 満彦, 竹内, 正至, 久保田, 俊郎, 栗原, 怜, 桜井, 祐成, 桑原, 道雄, 葉山, 修陽, 米島, 秀夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本透析医学会 28.12.1992
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ISSN0911-5889
1884-6211
DOI10.4009/jsdt1985.25.1377

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Summary:症例は原疾患が糖尿病の34歳女性CAPD患者で, CAPD開始3か月目から月経と月経の中間期 (midcycle) に下腹部痛とともに血性の排液を繰り返した. いずれの時も腹膜炎の疑いで入院したが排液中に多形核白血球の増加を認めず, 菌も検出されなかった. CTおよびMRI検査にて左卵巣チョコレート嚢腫が発見されたためgonadotropine releasing hormone (GnRH) agonist剤であるbuserelinの鼻腔内投与 (600-1,200μg/day) 治療で4か月後には臨床症状は消失し, MRI像での腫瘍サイズも治療6か月後では著明に縮小していた. 以上のことから本症例における血性排液の原因としては排卵を機に 1) 嚢腫内貯留血液が腹腔内に流出した, 2) 卵巣被膜が破綻した, あるいは 3) 卵巣に存在する脆弱化した子宮内膜症病巣からの出血が誘発されたため等が推測された. CAPD療法中の血性排液に関しては多くの報告があるが性周期とくにmidcycle期の排卵時期に一致した血性排液の報告は比較的少ない. またその原因が卵巣チョコレート嚢腫または卵巣における子宮内膜症病変からの出血であった例は稀と考えられるが, 生殖可能年齢女性CAPD患者の血性排液を認めた場合には出血原因の一つとして念頭におき, 性周期を十分に確認するとともに超音波検査, CT検査あるいはMRI検査などの画像診断により子宮内膜症の有無を検討する必要があると考えられる.
ISSN:0911-5889
1884-6211
DOI:10.4009/jsdt1985.25.1377