(シンポジウムII-1)急性期脳血管障害における摂食嚥下リハとリスク管理-栄養摂取とリスク管理の視点から

脳卒中急性期の摂食・嚥下障害の重症度の変容は速く, 障害を随時見極めながら, 安全に経口摂取を行うことが重要となる. 一方, リハ医の立場では, 急性期脳卒中患者へのアプローチは, 廃用症候群を出来るだけ予防し, いかに早期に積極的リハビリテーションを開始するかが重点となる. リハ依頼を受けた後は, 摂食・嚥下障害を含めた全身状況・リハ進捗状況を見極めながらVFを行い, 肺炎を合併させずに経口摂取可否の判断をする必要がある. 本シンポジウムにおいては, VF結果にもとづく経口摂取の判断と退院時の摂食状況の結果を中心に検討する. 当院は病床数733床の地域基幹病院であり, 嚥下障害食として(1)...

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Published in日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌 Vol. 10; no. 3; p. 295
Main Author 近藤国嗣
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会 31.12.2006
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ISSN1343-8441

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Summary:脳卒中急性期の摂食・嚥下障害の重症度の変容は速く, 障害を随時見極めながら, 安全に経口摂取を行うことが重要となる. 一方, リハ医の立場では, 急性期脳卒中患者へのアプローチは, 廃用症候群を出来るだけ予防し, いかに早期に積極的リハビリテーションを開始するかが重点となる. リハ依頼を受けた後は, 摂食・嚥下障害を含めた全身状況・リハ進捗状況を見極めながらVFを行い, 肺炎を合併させずに経口摂取可否の判断をする必要がある. 本シンポジウムにおいては, VF結果にもとづく経口摂取の判断と退院時の摂食状況の結果を中心に検討する. 当院は病床数733床の地域基幹病院であり, 嚥下障害食として(1)市販開始食・ゼリー食・ミキサーとろみ(2段階)食(ミキサー食), (2)全粥+舌でつぶせるペースト様食材(3段階のきざみ)にとろみをつけたもの(きざみとろみ食), (3)歯がなくてもつぶせる軟菜食(軟菜食)を提供している. いわゆるStroke Care Unitはない. VFは毎日2例施行出来る体制をとっており, 平成15・16年度の嚥下造影は380件314例で, そのうち脳卒中は90例(男性50例, 女性40例 平均71.8±11.6歳 脳梗塞65例, 脳出血18例, くも膜下出血4例, その他3例)であった. なお, リハ依頼時に経口摂取が安定していたか, 反復唾液嚥下テスト(RSST)・改訂水飲みテストおよび臨床的に嚥下障害が疑われない例に対してはVFを施行していない. 逆に重篤な嚥下障害が疑われる例や全身状態不安定例では臨床所見の改善を得た段階でVFを施行している. 発症日よりリハ依頼までの平均日数は11.9日(中央値6日, 約65%が1週間以内), 依頼後初回VF施行までの日数は19.9日(中央値10日)であった. 表1に初回VF前・VF後指示, 退院時の経口摂取状況を示す. 初回VF時に禁食を指示した例で退院時に経口摂取できていたのは1例のみであった. 一方, 初回VF時に経口摂取の指示をしたものの, 退院時禁食であったのは12例(全例ミキサー食)であった. 表2に初回VF後ミキサー食開始指示となるも退院時禁食(禁食群)であった群と経口摂取していた群(経口摂取群)の比較を示す. 疾患に偏りはなく, 年齢に差を認めなかった. 発症後依頼までの期間は禁食群で遅延傾向を示した. さらに, 依頼後より初回VF施行までの期間は経口摂取群と比して有意に遅延していた. 長期禁食による摂食嚥下機能の廃用も否定できないが, VF上経口摂取が可能と判断されても, 全身状態安定や, 臨床所見で経口摂取の可能性が推測できるまで長期間を要した症例においては, より慎重な対応が必要と考えられる. 脳卒中患者により安全に経口摂取を進めるために, RSST・水飲みテスト以外にも肺炎ハイリスク群をより簡便に弁別できる臨床的指標が望まれる.
ISSN:1343-8441