虚血性ST-T波異常の成因 -膜電位,イオンチャネルの変化を中心に
冠閉塞時の虚血性心筋ではATP産生が減少し細胞内ATPレベルが低下する結果, IK-ATPチャネルが開口し, K+は細胞外へ流出, 〔K+〕oは上昇する. 〔H+〕iの上昇に伴うK+のcotransportも〔K+〕oを高める. さらにNa+/K+ポンプ非活性化や灌流途絶によるwashout停止も〔K+〕o上昇に結びつく. このような〔K+〕o依存性の要因の他に, 〔K+〕o非依存性の要因も加わって, 虚血心筋では静止膜電位の減少(分極不全)が生じる. 一方, 静止電位の減少は, 〔H+〕iの上昇と組み合わさってNaチャネルの不活性化を招き, これはCaチャネル不活性化とともに脱分極不全を生じ...
        Saved in:
      
    
          | Published in | 心臓 Vol. 33; no. 4; pp. 340 - 349 | 
|---|---|
| Main Authors | , , , | 
| Format | Journal Article | 
| Language | Japanese | 
| Published | 
            丸善
    
        15.04.2001
     | 
| Online Access | Get full text | 
| ISSN | 0586-4488 | 
Cover
| Summary: | 冠閉塞時の虚血性心筋ではATP産生が減少し細胞内ATPレベルが低下する結果, IK-ATPチャネルが開口し, K+は細胞外へ流出, 〔K+〕oは上昇する. 〔H+〕iの上昇に伴うK+のcotransportも〔K+〕oを高める. さらにNa+/K+ポンプ非活性化や灌流途絶によるwashout停止も〔K+〕o上昇に結びつく. このような〔K+〕o依存性の要因の他に, 〔K+〕o非依存性の要因も加わって, 虚血心筋では静止膜電位の減少(分極不全)が生じる. 一方, 静止電位の減少は, 〔H+〕iの上昇と組み合わさってNaチャネルの不活性化を招き, これはCaチャネル不活性化とともに脱分極不全を生じさせる. このような分極不全/脱分極不全はそれぞれの拡張期/収縮期傷害電流を生じさせ, その結果, 見かけの/真のST上昇が生じる. 一方, 冠狭窄時にはこのようなST上昇は心内膜側のみに限局し, 健常な心外膜側で記録する心電図ではST上昇のミラー像としてのST下降が生じる. さらに冠閉塞解除後の心筋虚血からの回復期には, IKrチャネル発現減少に基づくAPD延長が生じ, これに虚血時の両親媒性脂質中間代謝体(LPCなど)上昇によるK+透過性減少やNaチャネル不活性化遅延などの変化が加わって, APDはますます延長する. このようなAPD延長は健常部の正常なAPDとの較差から著明な陰性T(冠性T)を生じさせる. | 
|---|---|
| ISSN: | 0586-4488 |