膵癌に家族集積性を示す3家系の検討
近年本邦でも増加している膵癌の病因として環境要因と遺伝要因の2面から研究が進められてきたが, 近年欧米では膵癌に対する家族集積性やLynchらの提唱するfamilial pancreatic cancer(以下, FPC)が注目を集め, 遺伝的要因の関与が考えられるようになってきた. 今回, 教室で経験した膵癌287家系中FPCの診断基準を満たす3家系(1%)について臨床的, 分子生物学的に検討を行った. 【家系1】73歳男性(膵体部癌)を発端者とする家系で, 10人兄弟中の3名と甥1名計4人に膵癌の発生を認めた. 発端者のp53, APC, BRCA2, k-rasの解析を行うも既知の遺伝子...
        Saved in:
      
    
          | Published in | 家族性腫瘍 Vol. 4; no. 2; p. A26 | 
|---|---|
| Main Authors | , , , , , , , , | 
| Format | Journal Article | 
| Language | Japanese | 
| Published | 
            家族性腫瘍研究会
    
        15.05.2004
     | 
| Online Access | Get full text | 
| ISSN | 1346-1052 | 
Cover
| Summary: | 近年本邦でも増加している膵癌の病因として環境要因と遺伝要因の2面から研究が進められてきたが, 近年欧米では膵癌に対する家族集積性やLynchらの提唱するfamilial pancreatic cancer(以下, FPC)が注目を集め, 遺伝的要因の関与が考えられるようになってきた. 今回, 教室で経験した膵癌287家系中FPCの診断基準を満たす3家系(1%)について臨床的, 分子生物学的に検討を行った. 【家系1】73歳男性(膵体部癌)を発端者とする家系で, 10人兄弟中の3名と甥1名計4人に膵癌の発生を認めた. 発端者のp53, APC, BRCA2, k-rasの解析を行うも既知の遺伝子には異常を認めなかった. 【家系2】67歳男性(膵体尾部癌)を発端者とする家系で, 5人兄弟中の2名に膵癌の発生を認めた. 発端者のp53, APCの解析を行うも既知の遺伝子には異常を認めなかった. 【家系3】68歳男性(膵頭部癌)を発端者とする家系で6人兄弟中3人に膵癌の発生を認めた. 3家系の悪性腫瘍は特に膵臓に高い臓器特異性が認められ, familial cancerの特徴であるanticipationの傾向も示唆された. 既知の遺伝子異常は指摘できなかったが, これら3家系の膵癌の家族集積性には強く遺伝的要因の関与が示唆された. | 
|---|---|
| ISSN: | 1346-1052 |