外傷性左主気管支断裂の治療経験

症例は28歳女性. 交通外傷にて当院救急搬入され, 多発肋骨骨折, 左血気胸と診断し胸腔ドレナージを施行した. しかし左下葉の無気肺が改善しないため気管支損傷の可能性を考慮し第4病日気管支鏡を行なったところ, 左主気管支の内腔が気管分岐部から約2cmのところで狭窄し末梢が確認できなかった. 3DCTの所見と合わせて気管支断裂と診断した. 呼吸状態が安定していたため第10病日に左肺を温存した左主気管支管状切除術を施行した. 主気管支はL5cmの長さで挫滅し, 膜様部に3mmの欠損孔があり心膜に被覆されていた. 肺の再膨張は良好であったが, 術後2日目に左無気肺となり気管支鏡所見で吻合部が狭窄して...

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Published in気管支学 Vol. 26; no. 3; p. 282
Main Authors 高橋鮎子, 大迫努
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本呼吸器内視鏡学会 10.05.2004
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ISSN0287-2137

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Summary:症例は28歳女性. 交通外傷にて当院救急搬入され, 多発肋骨骨折, 左血気胸と診断し胸腔ドレナージを施行した. しかし左下葉の無気肺が改善しないため気管支損傷の可能性を考慮し第4病日気管支鏡を行なったところ, 左主気管支の内腔が気管分岐部から約2cmのところで狭窄し末梢が確認できなかった. 3DCTの所見と合わせて気管支断裂と診断した. 呼吸状態が安定していたため第10病日に左肺を温存した左主気管支管状切除術を施行した. 主気管支はL5cmの長さで挫滅し, 膜様部に3mmの欠損孔があり心膜に被覆されていた. 肺の再膨張は良好であったが, 術後2日目に左無気肺となり気管支鏡所見で吻合部が狭窄していたため, 左主気管支から下葉枝にかけてZステントを留置した. その後無気肺は改善し, 12日目軽快退院となった. 2ヶ月目の気管支鏡所見でステント留置部に肉芽を認めたが, 焼灼術を行い改善した. 良性疾患でしかも若年者に対する気管支ステント留置はできる限り避けるべきと考えたが, 再手術よりもステント留置の方がリスクが少ないと考えた. 現在ステントの耐久性について厳重に観察中である.
ISSN:0287-2137