右乳癌を伴ったCowden病の一例

Cowden病は, 別名multiple hamartoma syndromeと呼ばれる常染色体優性遺伝性疾患で, 乳癌の合併率が高いことから, 家族性乳癌の一つに分類され, 染色体10q23に存在するPTEN遺伝子が原因遺伝子の一つと考えられている. 今回, 右乳房腫瘤を契機にCowden病と診断され, 遺伝子検査の結果, 染色体10q23に存在するPTEN遺伝子に変異が認められた症例を経験したので報告する. 症例は54歳女性. 主訴は巨大な右乳腺腫瘤. 既往歴として, 胃, 大腸ポリープ, 脳腫瘍, 甲状腺腫, 子宮筋腫を認めた. 家族歴として, 姉も消化管ポリープを指摘されている. 19...

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Published in家族性腫瘍 Vol. 4; no. 2; p. A38
Main Authors 高山伸, 安藤二郎, 小山靖夫, 菅野康吉, 石川和代, 市川明, 五十嵐誠治, 石川勉
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 家族性腫瘍研究会 15.05.2004
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ISSN1346-1052

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Summary:Cowden病は, 別名multiple hamartoma syndromeと呼ばれる常染色体優性遺伝性疾患で, 乳癌の合併率が高いことから, 家族性乳癌の一つに分類され, 染色体10q23に存在するPTEN遺伝子が原因遺伝子の一つと考えられている. 今回, 右乳房腫瘤を契機にCowden病と診断され, 遺伝子検査の結果, 染色体10q23に存在するPTEN遺伝子に変異が認められた症例を経験したので報告する. 症例は54歳女性. 主訴は巨大な右乳腺腫瘤. 既往歴として, 胃, 大腸ポリープ, 脳腫瘍, 甲状腺腫, 子宮筋腫を認めた. 家族歴として, 姉も消化管ポリープを指摘されている. 1997年より, 右乳腺の腫脹を自覚するが放置. 2001年より, 急速な増大傾向を認め, 2002年3月, 前医受診. 針生検にて, classVと診断され, 治療目的で当センターに紹介となった. 初診時の身体所見は, 右乳房に18x14cm大の巨大な腫瘍を認めた. 他に, 四肢の角化症, 口腔内の歯肉に小丘疹の集族, 下腹壁の動静脈奇形, 大腿部の脂肪腫等を認め, これらの既往歴と身体所見から, Cowden病を疑った. 平成14年3月27日に非定型的乳房切除術を行い, 病理診断は浸潤性乳管癌であった. また, 左乳房腫瘍に対し, 腫瘍摘出術を行ったところ, 過誤腫であった他にも, 甲状腺腫, 食道, 胃, 大腸ポリポーシス, 肝血管腫, 腹壁動静脈奇形, 子宮筋腫等が, 精査の結果, 確認され, 遺伝子検査を施行したところ, PTEN遺伝子のExon 6, Codon170にAGT(Ser)→ATT(Ile)のミスセンス変異と腫瘍組織における野生型PTEN遺伝子の欠損が認められた. また, 長男と長女にも消化管ポリポーシス, 甲状腺腫, 血管腫等の合併とPTEN遺伝子変異が認められた. 本変異は過去に報告のないものであるが, 臨床所見と家系内でのcoseggregationから本症例の原因遺伝子変異と考えられた.
ISSN:1346-1052