カナマイシン筋注製剤による皮疹の既往がありアミカシン硫酸塩吸入用製剤でも皮疹をきたした肺Mycobacterium avium complex症の1例

「要旨:」カナマイシン(KM)筋注による皮疹の経験のある肺Mycobacterium avium complex(MAC)症の61歳女性に対し, アミカシン硫酸塩吸入用製剤(ALIS)を使用し同様の皮疹をきたした薬剤交差反応を経験したので報告する. 患者はクラリスロマイシン単剤の長期治療歴のためマクロライド耐性があり, 標準治療に追加してKM筋注を行った. 投与2日後に前胸部と背部に広範囲に皮疹が出現し, KM筋注製剤による薬疹が疑われ中止となった. その後も排菌が持続し, 中葉舌区切除を行い術直後に排菌は陰性化したが, 約1年後に排菌が再確認された. 患者はアミノグリコシド系薬剤に対するアレ...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in結核 Vol. 98; no. 5; pp. 155 - 158
Main Authors 石田有莉子, 萩原恵里, 村上陽亮, 長澤遼, 丹羽崇, 奥田良, 関根朗雅, 小倉高志
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本結核・非結核性抗酸菌症学会 15.07.2023
Online AccessGet full text
ISSN0022-9776

Cover

More Information
Summary:「要旨:」カナマイシン(KM)筋注による皮疹の経験のある肺Mycobacterium avium complex(MAC)症の61歳女性に対し, アミカシン硫酸塩吸入用製剤(ALIS)を使用し同様の皮疹をきたした薬剤交差反応を経験したので報告する. 患者はクラリスロマイシン単剤の長期治療歴のためマクロライド耐性があり, 標準治療に追加してKM筋注を行った. 投与2日後に前胸部と背部に広範囲に皮疹が出現し, KM筋注製剤による薬疹が疑われ中止となった. その後も排菌が持続し, 中葉舌区切除を行い術直後に排菌は陰性化したが, 約1年後に排菌が再確認された. 患者はアミノグリコシド系薬剤に対するアレルギー歴があるも治療を強く希望し, 副作用等理解のうえALISを投与する方針とした. 入院下でALISを導入したが, 治療2日目にKM注射部位と同部位に皮疹が出現し, 再びアミノグリコシド系薬剤に対するアレルギーが確認された. ALISの血中への移行率は低く点滴のアミカシン(AMK)と比較して血中移行するAMKは微量であるが, アミノグリコシド系薬剤は化学構造が類似しているため薬剤交差性が起こりやすく, アレルギー反応が出現したと考えられた. KM筋注製剤に対するアレルギー反応はALIS吸入でも交差反応することがあり, 注意が必要と考えられた.
ISSN:0022-9776