院内における血液細胞処理のための指針:末梢血幹細胞採取から処理・輸注まで
自家造血幹細胞移植は抗がん剤に感受性のある難治性悪性リンパ腫などに対する治療法としてわが国では200を超える施設で年間約1500例が行われている. 一方, 同種移植は年間約2500例が実施されているが, 血縁者間移植の約半数は末梢血幹細胞移植である. 本年10月からは非血縁者間でも末梢血幹細胞移植が開始できるよう準備が進められている. また, 3月から末梢血幹細胞採取に対して保険請求ができるようになった. 欧米では造血幹細胞移植に用いられる細胞の採取から処理・保存全般に対してFACT-JACIE基準があるが, わが国ではこれに相当するガイドラインはまだ十分整備されていなかった. 末梢血幹細胞採...
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| Published in | 日本輸血学会雑誌 Vol. 56; no. 6; p. 739 |
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| Main Author | |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
日本輸血学会
25.12.2010
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| Online Access | Get full text |
| ISSN | 1881-3011 |
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| Summary: | 自家造血幹細胞移植は抗がん剤に感受性のある難治性悪性リンパ腫などに対する治療法としてわが国では200を超える施設で年間約1500例が行われている. 一方, 同種移植は年間約2500例が実施されているが, 血縁者間移植の約半数は末梢血幹細胞移植である. 本年10月からは非血縁者間でも末梢血幹細胞移植が開始できるよう準備が進められている. また, 3月から末梢血幹細胞採取に対して保険請求ができるようになった. 欧米では造血幹細胞移植に用いられる細胞の採取から処理・保存全般に対してFACT-JACIE基準があるが, わが国ではこれに相当するガイドラインはまだ十分整備されていなかった. 末梢血幹細胞採取に関しては同種移植における健常人ドナーを対象としたガイドラインがあり本年6月に改訂されたが, 既に多くの抗がん剤治療が行われリスクが高いはずの自家移植患者を対象にしたものはない. 一方, 採取された血液細胞は, 少なくとも自家移植では原則全例で凍結処理・保存および検査が必要である. 日本赤十字社で採取されGMP基準の下に処理・管理される輸血製剤と異なり, これらの細胞の処理・管理は自施設で行われ, すべての責任はこれら各施設および担当医に任せられている. 本年5月に「院内における血液細胞処理のための基準」が策定され, 初めて移植細胞の処理・管理指針ができた. これは, 同種および自家の末梢血幹細胞・骨髄細胞にまで対象範囲が及ぶことから, 基本的には移植を行っている全施設を対象としたものである. 指針では人員や施設整備面での規定は最小限にし, 責任体制やマニュアル, 記録シートの整備に重点を置いてある. けれども, 大半の施設ですでにそれぞれの処理・管理法を確立していることから, 指針で規定することでさまざまな問題が生じることが予想される. 本講演では末梢血幹細胞の採取から輸注までのプロセスに沿って. 新しい指針について解説し議論したい. |
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| ISSN: | 1881-3011 |