口蓋裂及び先天性鼻咽腔閉鎖不全症患者における滲出性中耳炎―臨床的観察

「1. はじめに」 口蓋裂患者が聴力障害を伴う耳疾患, 特に滲出性中耳炎に罹患しやすいことは古くから知られている. その原因としては耳管の先天的な形態異常や機能障害の存在, 上咽頭や副鼻腔から中耳への炎症の波及などの多くの要因があげられている. また, 口蓋裂患者だけでなく, 粘膜下口蓋裂や先天性鼻咽腔閉鎖不全症(いわゆる軟口蓋麻痺など)患者のように一見裂が明らかでない場合にも口蓋裂の場合と似た耳疾患に罹患しやすいことが指摘されている1). しかし異なる年齢や病型別に滲出性中耳炎がどの程度に出現するかについては更に検討が必要である. 本稿ではこれらの点についての我々の臨床的観察を行うと共に鼻咽...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 92; no. 7; pp. 1012 - 1177
Main Authors 矢部利江, 阿部雅子, 澤島政行, 野村恭也
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本耳鼻咽喉科学会 20.07.1989
Online AccessGet full text
ISSN0030-6622

Cover

More Information
Summary:「1. はじめに」 口蓋裂患者が聴力障害を伴う耳疾患, 特に滲出性中耳炎に罹患しやすいことは古くから知られている. その原因としては耳管の先天的な形態異常や機能障害の存在, 上咽頭や副鼻腔から中耳への炎症の波及などの多くの要因があげられている. また, 口蓋裂患者だけでなく, 粘膜下口蓋裂や先天性鼻咽腔閉鎖不全症(いわゆる軟口蓋麻痺など)患者のように一見裂が明らかでない場合にも口蓋裂の場合と似た耳疾患に罹患しやすいことが指摘されている1). しかし異なる年齢や病型別に滲出性中耳炎がどの程度に出現するかについては更に検討が必要である. 本稿ではこれらの点についての我々の臨床的観察を行うと共に鼻咽腔閉鎖不全に対する手術侵襲が及ぼす影響についても検討を加えた. 「2. 研究方法」 1)対象 1980年1月から1986年12月までの7年間に東大病院耳鼻咽喉科にて鼻咽腔閉鎖不全に対する手術を受けた患者のうち, 手術前と手術後6カ月に聴力検査を行うことのできた症例は122例244耳であった.
ISSN:0030-6622