悪性腫瘍を疑った線維腫の1例

線維腫とは, 結合組織すなわち種々の割合の線維芽細胞と膠原線維からなる腫瘍状病変である. 今回, 私たちは2歳女児の左側下顎第2乳臼歯後方に急激に増殖し, 悪性腫瘍を疑った線維腫の1例を経験したので報告した. 患者:2歳女児. 初診:平成6年5月2日. 主訴:E遠心部歯肉腫脹. 家族歴:特記事項なし. 既往歴:特記事項なし. 現病歴:平成6年4月頃より厄遠心部歯肉の腫脹に気付き, 近医歯科医院受診. 贋部濾胞性歯嚢胞の疑いにて紹介来院. 現症:顔貌は左右対称性で所属リンパ節は触知しなかった. 口腔内は, E遠心部歯肉部に軽度腫脹が認められたが表面粘膜は正常粘膜で被われていた. また, 発赤,...

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Published in小児口腔外科 Vol. 7; no. 1; p. 63
Main Authors 松本忠士, 寺村千俊, 和久雅彦, 飯田修一, 吉武一貞
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本小児口腔外科学会 01.07.1997
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ISSN0917-5261

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Summary:線維腫とは, 結合組織すなわち種々の割合の線維芽細胞と膠原線維からなる腫瘍状病変である. 今回, 私たちは2歳女児の左側下顎第2乳臼歯後方に急激に増殖し, 悪性腫瘍を疑った線維腫の1例を経験したので報告した. 患者:2歳女児. 初診:平成6年5月2日. 主訴:E遠心部歯肉腫脹. 家族歴:特記事項なし. 既往歴:特記事項なし. 現病歴:平成6年4月頃より厄遠心部歯肉の腫脹に気付き, 近医歯科医院受診. 贋部濾胞性歯嚢胞の疑いにて紹介来院. 現症:顔貌は左右対称性で所属リンパ節は触知しなかった. 口腔内は, E遠心部歯肉部に軽度腫脹が認められたが表面粘膜は正常粘膜で被われていた. また, 発赤, 圧痛などの炎症所見もなかった. X線所見:6の歯胚が遠心へ圧迫され, その歯冠を含む拇指頭大の境界明瞭な嚢胞様のX線透過像を認めた. 臨床診断:匠濾胞性歯嚢胞. 処置および経過:開窓予定として経過観察していたところ, 初診日より4日目にE遠心部にφ2cm大の表面平滑な半球状の弾性軟の腫瘤が出現した. 腫瘤の発育速度などから, 悪性腫瘍を疑い試験切除を行ったところ線維腫と診断を得た. 6月9日入院の上, 全身麻酔下にて腫瘍摘出術を行った. 腫瘍は周囲組織と容易に剥離摘出することができた. 現在再発もなく経過良好である. 今後とも経過観察を予定している.
ISSN:0917-5261