失神発作を繰り返した若年女性の孤発性QT延長症候群の1例

先天性QT延長症候群は, 原因遺伝子により1~8型までの8つのサブタイプに分けられるが, 日本人では1~3型が9割以上を占める. このようなQT延長症候群は無治療で経過した場合, 13%の患者において40歳となる前に心停止または突然死を生じるといわれており, 抗不整脈薬などによる治療が必要となる. LQT1はβ遮断薬が有効であるのに対し, 一方, LQT2, LQT3では効果が乏しいかあるいは無効である. 一方, LQT3においてはメキシレチンなどのナトリウムチャネル拮抗性の抗不整脈薬またペースメーカー療法が有効とされる. このようにQT延長症候群は均一な疾患でないために臨床症状により, さら...

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Published in心臓 Vol. 38; no. 3; pp. 292 - 297
Main Authors 室野浩司, 松崎弦, 江口航生, 正路由紀, 高橋通, 斉藤哲也, 山本雄士, 今井靖, 松本晃裕, 安喰恒輔, 前村浩二, 本江純子, 大野実, 世古義規, 平田恭信, 永井良三
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本心臓財団 15.03.2006
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ISSN0586-4488

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Summary:先天性QT延長症候群は, 原因遺伝子により1~8型までの8つのサブタイプに分けられるが, 日本人では1~3型が9割以上を占める. このようなQT延長症候群は無治療で経過した場合, 13%の患者において40歳となる前に心停止または突然死を生じるといわれており, 抗不整脈薬などによる治療が必要となる. LQT1はβ遮断薬が有効であるのに対し, 一方, LQT2, LQT3では効果が乏しいかあるいは無効である. 一方, LQT3においてはメキシレチンなどのナトリウムチャネル拮抗性の抗不整脈薬またペースメーカー療法が有効とされる. このようにQT延長症候群は均一な疾患でないために臨床症状により, さらには可能ならば遺伝子診断を追加することで病型を推定, 診断し, 最適な治療を選択する必要がある. 今回われわれは11歳頃に発症した先天性QT延長症候群の27歳女性で, 入院中にtorsade de pointes(TdP)による失神を繰り返した1例を経験した. 臨床症状からはLQT1は否定的であり, LQT2またはLQT3が疑われた. 薬物治療にて発作は抑えられたがQTcの短縮効果は乏しくペースメーカー植え込み術を施行, 以降発作は認めていない. 植え込み型除細動器に関しては適応症例と考えられたが, 同意が得られなかった. 若年女性であり今後は妊娠, 出産の予定があるため, 薬物療法, 非薬物療法を含めて治療方針について本人から十分な理解を得るとともに, 詳細な検討を要する.
ISSN:0586-4488