最近10年間のB型劇症肝炎の治療成績

目的:B型劇症肝炎は血漿交換療法等の肝支持療法の導入により生存率の向上が認められているが, 現在も予後不良な疾患の一つである. 今回, 開院以来当輸血部で血漿交換療法または交換輸血療法を試みたB型劇症肝炎例について臨床的に検討したので報告する. 対象:症例は, 1983年から1992年までに当院に入院したB型劇症肝炎で, 当輸血部にて血漿交換療法または交換輸血療法を施行した8例, 年齢は15歳から73歳平均45歳, 男5例, 女3例であった. 全例HBV初感染例であり, キャリアーからの急性発症は今回の検討からは除外した. 結果・考察:8例の感染経路は初期の2例が輸血, 1988年以降の6例は...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 39; no. 3; pp. 683 - 684
Main Authors 中田浩一, 坂本久浩, 江藤澄哉, 宮川隆之, 梶原康巨, 鈴木秀郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.07.1993
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ISSN0546-1448

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Summary:目的:B型劇症肝炎は血漿交換療法等の肝支持療法の導入により生存率の向上が認められているが, 現在も予後不良な疾患の一つである. 今回, 開院以来当輸血部で血漿交換療法または交換輸血療法を試みたB型劇症肝炎例について臨床的に検討したので報告する. 対象:症例は, 1983年から1992年までに当院に入院したB型劇症肝炎で, 当輸血部にて血漿交換療法または交換輸血療法を施行した8例, 年齢は15歳から73歳平均45歳, 男5例, 女3例であった. 全例HBV初感染例であり, キャリアーからの急性発症は今回の検討からは除外した. 結果・考察:8例の感染経路は初期の2例が輸血, 1988年以降の6例は散発性であった. 8例中, 悪急性型は1例のみで他の7例は急性型であった. 生存率は50.0%(4/8)であり, 厚生省研究班の報告(平成元年度B型劇症肝炎の生存率:28.9%)よりもかなり良好であった. 生存群と死亡群を比較すると, 平均年齢は生存群が35±15歳, 死亡群55±19歳で有意差はないが死亡群の方が高齢であった. 性別では, 生存群4例中男1例, 女3例に対して死亡群は4例全て男であり, 女の方が有意に生存例が多かった. 発症から脳症出現までの日数, 血漿交換開始時のHBs抗原・抗体陽性率, 血漿交換開始時の昏睡度, 血漿交換の回数, 血漿交換における使用FFP単位数は, 両群間で有意な差はなかった. 生存例における平均血漿交換回数は6.25回, FFP平均使用単位数は213単位であったが, 成分採血FFPの導入により, 初期の症例に較べて最近の症例ではドナー数は約半数に減少しており, 2次的な輸血感染症の予防に貢献しているものと思われた.
ISSN:0546-1448