急性期から維持期にかけて, 病態時期に応じた口腔ケアの役割

2000年に介護保険受給者は220万人であったが, 現在は430万人以上となっている. さらに2015年には介護保険受給者は640万人, 2025年には800万人以上になると予測されている. 介護保険制度は, 国民に親しまれ有難い保険であるとの評価を, まずしなければいけないと思うが, 一方では要介護状態になる高齢者が, 年間20万人近いペースで増加しているとの問題も生じている. そこで, 要介護状態になることを予防する, あるいは要介護状態の重度化を予防するために, 「介護予防重視型施策」が厚生労働省から打ち出され, 平成18年4月に改正された介護保険において, 要介護高齢者に対する「新予防...

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Published in日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌 Vol. 11; no. 3; p. 211
Main Author 植田耕一郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会 31.12.2007
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ISSN1343-8441

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Abstract 2000年に介護保険受給者は220万人であったが, 現在は430万人以上となっている. さらに2015年には介護保険受給者は640万人, 2025年には800万人以上になると予測されている. 介護保険制度は, 国民に親しまれ有難い保険であるとの評価を, まずしなければいけないと思うが, 一方では要介護状態になる高齢者が, 年間20万人近いペースで増加しているとの問題も生じている. そこで, 要介護状態になることを予防する, あるいは要介護状態の重度化を予防するために, 「介護予防重視型施策」が厚生労働省から打ち出され, 平成18年4月に改正された介護保険において, 要介護高齢者に対する「新予防給付」と, 健康高齢者に対する「地域支援事業」が施行された. これら制度の中に, 「口腔機能の向上支援サービス」が導入された. 本サービスは, 摂食機能訓練と口腔衛生管理が中核をなしている. いよいよ医療の領域ばかりではなく, 福祉, 介護, 保健の分野においても摂食機能療法なり摂食機能訓練が注視され, 取り扱われる時代となったのである. 当科は平成16年4月に開設して3年が経過した. 歯学部付属病院に隣接する医学部付属病院における急性期から始まり, 亜急性期, 回復期, 維持期, そして終末期の病態変遷の流れの中に摂食機能療法の位置づけが, ここにきて確立してきた. 現在, 摂食機能療法, 歯科疾患治療, 口腔ケアの3つを柱にして, 摂食機能訓練室における外来診療の他に, 入院診療および訪問診療を適宜行っている. 急性期口腔ケアは, 1. 誤嚥性肺炎予防 2. 廃用予防 3. 意識状態覚醒 などの目的をもつものである. 回復期口腔ケアは, 実生活に向けて, 特に食事行為および口腔衛生管理の自立を目的に実施される. 維持期においては, 社会的資源を活用しながら療養生活を送るにあたって, 「口腔機能の向上」が介護予防施策となった. 摂食機能訓練または口腔ケアの呼び声のもと, すでに全国各市町村の高齢者施設や在宅で, 具体的な取り組みが展開されている. そこで今回は, 急性期から維持期に至る摂食機能障害に対する歯科的な口腔ケアの役割, および介護予防施策における「摂食機能訓練」の位置づけについて検討する.
AbstractList 2000年に介護保険受給者は220万人であったが, 現在は430万人以上となっている. さらに2015年には介護保険受給者は640万人, 2025年には800万人以上になると予測されている. 介護保険制度は, 国民に親しまれ有難い保険であるとの評価を, まずしなければいけないと思うが, 一方では要介護状態になる高齢者が, 年間20万人近いペースで増加しているとの問題も生じている. そこで, 要介護状態になることを予防する, あるいは要介護状態の重度化を予防するために, 「介護予防重視型施策」が厚生労働省から打ち出され, 平成18年4月に改正された介護保険において, 要介護高齢者に対する「新予防給付」と, 健康高齢者に対する「地域支援事業」が施行された. これら制度の中に, 「口腔機能の向上支援サービス」が導入された. 本サービスは, 摂食機能訓練と口腔衛生管理が中核をなしている. いよいよ医療の領域ばかりではなく, 福祉, 介護, 保健の分野においても摂食機能療法なり摂食機能訓練が注視され, 取り扱われる時代となったのである. 当科は平成16年4月に開設して3年が経過した. 歯学部付属病院に隣接する医学部付属病院における急性期から始まり, 亜急性期, 回復期, 維持期, そして終末期の病態変遷の流れの中に摂食機能療法の位置づけが, ここにきて確立してきた. 現在, 摂食機能療法, 歯科疾患治療, 口腔ケアの3つを柱にして, 摂食機能訓練室における外来診療の他に, 入院診療および訪問診療を適宜行っている. 急性期口腔ケアは, 1. 誤嚥性肺炎予防 2. 廃用予防 3. 意識状態覚醒 などの目的をもつものである. 回復期口腔ケアは, 実生活に向けて, 特に食事行為および口腔衛生管理の自立を目的に実施される. 維持期においては, 社会的資源を活用しながら療養生活を送るにあたって, 「口腔機能の向上」が介護予防施策となった. 摂食機能訓練または口腔ケアの呼び声のもと, すでに全国各市町村の高齢者施設や在宅で, 具体的な取り組みが展開されている. そこで今回は, 急性期から維持期に至る摂食機能障害に対する歯科的な口腔ケアの役割, および介護予防施策における「摂食機能訓練」の位置づけについて検討する.
Author 植田耕一郎
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