小児重症頭部外傷症例における脳の可塑性
外傷により損傷を強く受けた神経細胞は, 通常非可逆的にその機能を失う. その結果, 損傷を受けた部分の神経細胞の持つ機能は, 後遺症として脱落症状を残す訳である. しかし小児の場合, 成人に比べ生命予後は良好で, また神経脱落症状を残すことも少ないといわれている. われわれは, 重症頭部外傷の小児例において, 入院時およびその後の経過より小児の脳可塑性に関し, 興味ある4症例を経験したので報告する. 症例は1歳, 2歳, 6歳, 8歳で受傷後1時間以内のCTにて, いずれも急性硬膜下血腫, 著しい脳腫脹を伴っており, 1例では大きな左脳内血腫を伴っていた. 初診時のGlasgow Coma S...
Saved in:
| Published in | 蘇生 Vol. 7; p. 81 |
|---|---|
| Main Authors | , , , , |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
日本蘇生学会
01.04.1989
|
| Online Access | Get full text |
| ISSN | 0288-4348 |
Cover
| Summary: | 外傷により損傷を強く受けた神経細胞は, 通常非可逆的にその機能を失う. その結果, 損傷を受けた部分の神経細胞の持つ機能は, 後遺症として脱落症状を残す訳である. しかし小児の場合, 成人に比べ生命予後は良好で, また神経脱落症状を残すことも少ないといわれている. われわれは, 重症頭部外傷の小児例において, 入院時およびその後の経過より小児の脳可塑性に関し, 興味ある4症例を経験したので報告する. 症例は1歳, 2歳, 6歳, 8歳で受傷後1時間以内のCTにて, いずれも急性硬膜下血腫, 著しい脳腫脹を伴っており, 1例では大きな左脳内血腫を伴っていた. 初診時のGlasgow Coma Scaleは4が2例, 5が2例であった. 臨床経過ではいずれもただちに血腫除去術, あるいは減圧開頭術が行われ, 1例では2週間にわたるBarbiturate療法が行われた. いずれの症例においても意識障害の遷延化, 言語障害, 運動障害が長期にわたり継続したが, 徐々に改善をみせている. これに対しCT所見では急性期においては, 著しい脳腫脹を示し, その後さまざまの程度で患側の脳萎縮を示した. しかし, 著しい脳萎縮にもかかわらず, 言語, 運動, 知能障害が軽度な症例が認められた. 一般にいわゆる新生児頭部外傷の予後は極めて悪いといわれている. このこととわれわれの症例の検索とを考えあわせてみると結論として次のような結論が可能となると考えられる. すなわち, 小児重症頭部外傷では, その予後がCT所見との間に大きな差異を生じることがあり, この差異はMyelination形成時期と, 神経細胞の機能獲得時期の差によって生じると考えられる. 今回はわずかな症例であるが, 今後さらに症例をかさね検討して行くつもりである. |
|---|---|
| ISSN: | 0288-4348 |