失語症に視知覚認知障害を合併した脳梗塞の1例

症例は61歳男性, 会社員, 1999年5/6発症の脳梗塞の患者. 6/17当院入院時意識清明, 視力, 視野正常, 右片麻痺ごく軽度, 右STEF92%であった. 失語を認め, 自発語を認めたがやや非流暢, 簡単な日常生活の理解は可能だったが複雑な聴理解は困難だった. 自発書字, 書き取り物品呼称は困難だったが復唱は可能だった. 物や写真を見てもそれが何かわからないといった症状を認め, 初回SLTA上, 絵カードを用いた課題が全て低得点だった. Frostig視知覚発達検査上, 視覚理解, 視覚反応, 形の恒常性, 位置知覚, 空間知覚の障害が疑われ, 約1カ月の視知覚認知訓練を施行したとこ...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 37; no. 2; p. 133
Main Authors 橋本圭司, 猪飼哲夫, 植松海雲, 殷祥洙, 中島恵子, 奥平奈保子, 渡辺修, 木村知行, 宮野佐年
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 18.02.2000
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ISSN0034-351X

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Summary:症例は61歳男性, 会社員, 1999年5/6発症の脳梗塞の患者. 6/17当院入院時意識清明, 視力, 視野正常, 右片麻痺ごく軽度, 右STEF92%であった. 失語を認め, 自発語を認めたがやや非流暢, 簡単な日常生活の理解は可能だったが複雑な聴理解は困難だった. 自発書字, 書き取り物品呼称は困難だったが復唱は可能だった. 物や写真を見てもそれが何かわからないといった症状を認め, 初回SLTA上, 絵カードを用いた課題が全て低得点だった. Frostig視知覚発達検査上, 視覚理解, 視覚反応, 形の恒常性, 位置知覚, 空間知覚の障害が疑われ, 約1カ月の視知覚認知訓練を施行したところ, Frostig視知覚発達検査では視覚と運動の反応, 空間における知覚, 空間関係の3つの項目で改善が認められた. WAIS-RではPIQが評価不能から68点に改善した. SLTAでは絵カードを用いた課題を含め全般的な改善が認められた. 過去の報告ではもやもや病の学習障害児に対する視知覚認知訓練により, Frostig視知覚発達障害, WISC-Rが改善したとしている. 今回の症例から成人脳卒中患者に対する視知覚認知障害の評価, 訓練の有用性が示唆された.
ISSN:0034-351X