嚥下期以前の咀嚼中における舌運動観察の試み

【はじめに】食物を口に入れた後に, 食品選別, 食塊形成を経て, 咽頭へ送り込み, そして嚥下に至る, 摂食嚥下障害を診る上で, 健常者の摂食, 咀嚼, 嚥下各々の関係を詳細に検討しておく必要があると考える. 【目的】健常者における摂食から嚥下までの咀嚼器官の機能様相を舌運動と下顎運動, ならびに舌運動, 下顎運動と咀嚼筋活動から把握する. 【対象】自覚的, 他覚的に顎口腔機能に異常を認めない健常有歯顎者6名(平均年齢28.8歳)を被験者とした. 【方法】実験1として舌運動と下顎運動を同時記録した. 下顎運動の記録にはMKGを用い, 舌運動の観察は, 矢状面断における左右第一大臼歯間と舌背との...

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Published in日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌 Vol. 1; no. 1; pp. 127 - 128
Main Authors 今井敦子, 田中昌博, 川添堯彬
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会 01.12.1997
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ISSN1343-8441

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Summary:【はじめに】食物を口に入れた後に, 食品選別, 食塊形成を経て, 咽頭へ送り込み, そして嚥下に至る, 摂食嚥下障害を診る上で, 健常者の摂食, 咀嚼, 嚥下各々の関係を詳細に検討しておく必要があると考える. 【目的】健常者における摂食から嚥下までの咀嚼器官の機能様相を舌運動と下顎運動, ならびに舌運動, 下顎運動と咀嚼筋活動から把握する. 【対象】自覚的, 他覚的に顎口腔機能に異常を認めない健常有歯顎者6名(平均年齢28.8歳)を被験者とした. 【方法】実験1として舌運動と下顎運動を同時記録した. 下顎運動の記録にはMKGを用い, 舌運動の観察は, 矢状面断における左右第一大臼歯間と舌背との交点の上下の動きとしてMモード超音波像を用いた. 被験食品には, おかき, たくあん, かまぼこを用いて, 摂食から嚥下直前までの咀嚼機能様相を検討した. 次に, 実験2として, 咀嚼筋筋電図(咬筋および側頭筋)を追加し, 被験食品に米飯を用いた. 咀嚼周期の影響を受けない正規化包絡線を作成し, 各咀嚼ストロークでの舌運動, 下顎運動および筋活動状態の協調作用について比較検討を行った. 【結果】摂食してから食塊の性状の変化は, 末梢からの感覚情報を絶えず受容するように, 咀嚼機能が調節され嚥下に至ることが明らかとなった. また, 米飯咀嚼時の下顎運動咬合相開始点, 舌最下点, 各筋活動ピークからみた協調様相は, 咀嚼進行に従い変化することが明らかとなった. 【考察】摂食, 咀嚼, 嚥下は, 切り離すことなく, 一連の過程としてとらえることが必要である. 本法は, 摂食嚥下障害へのひとつのアプローチになり得ると考えられた. 日本人の主食であり, 比較的食べやすい米飯を被験食品として, その摂食, 咀嚼, 嚥下過程から, 各運動様相, 筋活動様相そして協調作用の詳細を把握することにより, 治療へと役立てることを今後に目指したい.
ISSN:1343-8441