社会復帰ができた電柱上心停止の1蘇生例

症例:21歳男性, 電気工事作業員 主訴:来院時心肺停止 現病歴:平成14年7月24日16時頃, 電柱で低圧電線の作業時にショート音と同時にぐったりしたのに近くにいた同僚が気付き, すぐに電柱から下ろしCPRを開始した. 周辺住民により救急車出動が要請され16時6分救急隊が現場に到着しCPRを引き継いだ. 救急車収容時心電図モニターはVTであったが, 救急救命士が同乗していなかったため心マッサージとバッグマスク換気下に搬送され, 16時15分当院救急外来に到着した. 経過:搬入時, 心電図モニターは心静止であった. ただちに気管挿管を行い, アドレナン, アトロピン等の静注を行い, 幅広いQR...

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Published in蘇生 Vol. 22; no. 3; p. 200
Main Authors 佐藤俊秀, 橋口清明, 城嘉孝
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本蘇生学会 10.10.2003
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ISSN0288-4348

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Summary:症例:21歳男性, 電気工事作業員 主訴:来院時心肺停止 現病歴:平成14年7月24日16時頃, 電柱で低圧電線の作業時にショート音と同時にぐったりしたのに近くにいた同僚が気付き, すぐに電柱から下ろしCPRを開始した. 周辺住民により救急車出動が要請され16時6分救急隊が現場に到着しCPRを引き継いだ. 救急車収容時心電図モニターはVTであったが, 救急救命士が同乗していなかったため心マッサージとバッグマスク換気下に搬送され, 16時15分当院救急外来に到着した. 経過:搬入時, 心電図モニターは心静止であった. ただちに気管挿管を行い, アドレナン, アトロピン等の静注を行い, 幅広いQRSが出現した時点で3回除細動を行い自己心拍が再開した. 電流の通過を示すような皮膚の損傷は見当たらなかった. その後救急病棟で1日, ICUで数日脳保護のために軽度低体温療法を行った. 当初心室性不整脈が頻発したがリドカイン等で対処できた. 心エコーで冠動脈の血流分布に一致しない心室壁運動の低下を認めたが, 数日で改善した. 意識レベルは復温後一過性の興奮期を経て徐々に改善した. 経過中に右肺に肺化膿症を合併し右肺葉切除を余儀なくされた. 術後も気管支断端からのリークに悩まされたが, 外科と呼吸器科による治療で改善した. 平成15年1月21日退院し, 現在は職場に復帰している. 病院前除細動はなされなかったが, 市民によるCPRと早期の通報から, 救急隊によるCPRの引継ぎと搬送, 救急外来におけるACLS, 脳指向型の全身管理に及ぶ救命の連鎖がうまく機能した症例であった.
ISSN:0288-4348