HCV抗体陽性の原発性胆汁性肝硬変に肝細胞癌を合併した1例

C型肝炎ウイルス(HCV)抗体陽性の原発性胆汁性肝硬変(PBC)の経過観察中に肝細胞癌(HCC)を合併した1例を報告する.症例は67歳,女性.35歳時,子宮筋腫の手術の際に輸血をうけた.1986年4月異常行動と記銘力低下がみられ当院を初診し,肝性脳症を伴う肝硬変と診断された.1987年12月より皮膚掻痒感がみられ,血清ALP値の持続高値とAMA陽性を認めPBCと診断し経過観察を行っていた.1990年3月倦怠感の出現ならびにAFPの上昇を認め入院となった.超音波検査とCTにて肝S6, S8に2.5cm大の腫瘍性病変と血管撮影で同部位に濃染像を認め,腫瘍生検にて高分化型HCCと診断した.非腫瘍部肝...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in肝臓 Vol. 33; no. 2; pp. 167 - 173
Main Authors 青柳, 豊, 畑, 耕治郎, 畠山, 重秋, 早川, 晃史, 上村, 朝輝, 大越, 章吾, 長山, 正四郎, 波田野, 徹, 野本, 実, 市田, 隆文
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本肝臓学会 25.02.1992
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0451-4203
1881-3593
DOI10.2957/kanzo.33.167

Cover

More Information
Summary:C型肝炎ウイルス(HCV)抗体陽性の原発性胆汁性肝硬変(PBC)の経過観察中に肝細胞癌(HCC)を合併した1例を報告する.症例は67歳,女性.35歳時,子宮筋腫の手術の際に輸血をうけた.1986年4月異常行動と記銘力低下がみられ当院を初診し,肝性脳症を伴う肝硬変と診断された.1987年12月より皮膚掻痒感がみられ,血清ALP値の持続高値とAMA陽性を認めPBCと診断し経過観察を行っていた.1990年3月倦怠感の出現ならびにAFPの上昇を認め入院となった.超音波検査とCTにて肝S6, S8に2.5cm大の腫瘍性病変と血管撮影で同部位に濃染像を認め,腫瘍生検にて高分化型HCCと診断した.非腫瘍部肝生検ではPBC(Scheuer 4期)と診断された.一方,HBs抗原,HBs抗体は陰性であったが,HCV抗体は陽性であり,さらにHCV core抗体の陽性ならびにPCR法にてHCV RNAが確認された.本例における基礎病変としての肝硬変はPBCに基づくものであったが,HCCの発症にはHCVの持続感染の関与が示唆された.
ISSN:0451-4203
1881-3593
DOI:10.2957/kanzo.33.167