線維素溶解現象亢進時にも出血しない心大血管用パッチ材料の開発

人工心肺を長時間回転した場合、一度止血していた人工血管や心室壁パッチより再出血が認められることがある。特にダクロン布のようにフィブリン析出の目詰まりにより止血されている部位は線溶系亢進による再出血の危険性を持っている。この欠点を解消するため、線溶系亢進に影響されない自家組織細片による目詰まり法を用い、安全なパッチ材料を作成した。方法としては、手術時に皮下脂肪結合組織を細片として高有孔性ダクロン布製人工血管内に圧注入し、組織片により目詰まりさせ、その後、長軸方向に切開して膜状として使用するもので、動物実験により人為的な線維素溶解現象亢進状態下においても出血しなかった。一方従来のpreclotti...

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Published in人工臓器 Vol. 21; no. 1; pp. 201 - 205
Main Authors 野一色, 泰晴, 鈴木, 伸一, 星野, 和実, 近藤, 治郎, 梶原, 博一, 磯田, 晋, 小菅, 宇之, 孟, 真, 山崎, 一也, 富山, 泉, 松本, 昭彦, 石井, 正徳, 井元, 清隆
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本人工臓器学会 15.02.1992
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ISSN0300-0818
1883-6097
DOI10.11392/jsao1972.21.201

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Summary:人工心肺を長時間回転した場合、一度止血していた人工血管や心室壁パッチより再出血が認められることがある。特にダクロン布のようにフィブリン析出の目詰まりにより止血されている部位は線溶系亢進による再出血の危険性を持っている。この欠点を解消するため、線溶系亢進に影響されない自家組織細片による目詰まり法を用い、安全なパッチ材料を作成した。方法としては、手術時に皮下脂肪結合組織を細片として高有孔性ダクロン布製人工血管内に圧注入し、組織片により目詰まりさせ、その後、長軸方向に切開して膜状として使用するもので、動物実験により人為的な線維素溶解現象亢進状態下においても出血しなかった。一方従来のpreclotting法による部位は再出血がみられた。本実験で作成したパッチ材料は高有孔性ダクロン布を枠組みとして使用していることから、柔軟で取り扱いやすく、しかも自家組織片を用いるため植え込み後の内膜治癒も良好であると期待される。
ISSN:0300-0818
1883-6097
DOI:10.11392/jsao1972.21.201