日本におけるTrichophyton tonsurans 感染症の疫学とその感染対策に関する研究

ほぼ10年前より, 白癬菌の一種であるTrichophyton tonsuransが, 格闘技選手を介して日本へ持ち込まれ, 本感染症が急激に増加し大きな問題となっている. われわれは, この感染症拡大を阻止するために, 感染対策を行ってきた.方法: 2008年-2012年の5年間にわたって, 東京学生柔道連盟加盟の一部校, 約20校の延べ6,133名の柔道選手について, ブラシ培養法を行い陽性者を調べた.結果: 6,133名中418名 (6.0%) が陽性であった. a. ブラシ培養法で2集落以下は, ミコナゾール含有シャンプで治療し, b. 3集落以上の者は, 1) itraconazol...

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Published in順天堂醫事雑誌 Vol. 59; no. 3; pp. 246 - 250
Main Author 比留間, 政太郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 順天堂医学会 2013
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ISSN2187-9737
2188-2126
DOI10.14789/jmj.59.246

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Summary:ほぼ10年前より, 白癬菌の一種であるTrichophyton tonsuransが, 格闘技選手を介して日本へ持ち込まれ, 本感染症が急激に増加し大きな問題となっている. われわれは, この感染症拡大を阻止するために, 感染対策を行ってきた.方法: 2008年-2012年の5年間にわたって, 東京学生柔道連盟加盟の一部校, 約20校の延べ6,133名の柔道選手について, ブラシ培養法を行い陽性者を調べた.結果: 6,133名中418名 (6.0%) が陽性であった. a. ブラシ培養法で2集落以下は, ミコナゾール含有シャンプで治療し, b. 3集落以上の者は, 1) itraconazoleを100mg/日を6週間, または400mg/日を1週間内服, または2) terbinafine 125mg/日を6週間, または500mg/日を1週間投与した. この治療法で, 325名中311名 (87.1%) が, 菌が陰性化した. 陰性化しなかった者の多くは治療を中断した者であった.考察: 今回の治療法は有効であった. しかし, 一部の者は治療を完了できなかった. この感染症を阻止するための次のステップは, 1) よりよい治療法の開発, 2) この感染症の予防と制御法のガイドラインの改良, 3) 治療を貫徹するために皮膚科専門医のネットワークづくりをすることが急務である.
ISSN:2187-9737
2188-2126
DOI:10.14789/jmj.59.246