豚流行性下痢の迅速診断に適した免疫組織化学的染色条件の検討

豚流行性下痢(PED)は,主に新生子豚の水様性下痢や高い致死率を示す急性ウイルス感染症である.PEDの診断には免疫組織化学的染色(免疫染色)による腸管病変部のウイルス抗原の検出が有効であるが,通常の手法では結果判定までに数日間の時間を要する.そこで迅速判定を目的として,迅速固定および凍結切片を用いたPEDの免疫染色の手法を検討した.迅速固定では,10%中性緩衝ホルマリン液を用いて温度や時間を変更した条件を設定してPED発症豚の小腸を固定し,免疫染色標本でのウイルス抗原の染色強度と分布を顕微鏡下で比較した.その結果,40℃および60℃の1時間加温固定が迅速固定としてPEDの免疫染色に最適であった...

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Published in産業動物臨床医学雑誌 Vol. 7; no. 4; pp. 163 - 168
Main Authors 矢口, 裕司, 川嶌, 健司, 高橋, 覚志, 小松, 友一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本家畜臨床学会 ・ 大動物臨床研究会 31.12.2016
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ISSN1884-684X
2187-2805
DOI10.4190/jjlac.7.163

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Summary:豚流行性下痢(PED)は,主に新生子豚の水様性下痢や高い致死率を示す急性ウイルス感染症である.PEDの診断には免疫組織化学的染色(免疫染色)による腸管病変部のウイルス抗原の検出が有効であるが,通常の手法では結果判定までに数日間の時間を要する.そこで迅速判定を目的として,迅速固定および凍結切片を用いたPEDの免疫染色の手法を検討した.迅速固定では,10%中性緩衝ホルマリン液を用いて温度や時間を変更した条件を設定してPED発症豚の小腸を固定し,免疫染色標本でのウイルス抗原の染色強度と分布を顕微鏡下で比較した.その結果,40℃および60℃の1時間加温固定が迅速固定としてPEDの免疫染色に最適であった.凍結切片を用いた手法では,-80℃に冷却したヘキサンで凍結後にクリオスタットにより薄切した切片をホルマリンメタノールで固定し,マイクロウェーブ処理による抗原賦活化法を用いてPEDの免疫染色を実施した.凍結切片を用いたPEDの免疫染色において,ウイルス特異抗原を検出し形態学的にも十分な染色結果が得られた.以上より,迅速固定および凍結切片を用いた免疫染色を実施することにより,解剖当日ないし翌日に判定可能な迅速なPEDの診断が可能となった.
ISSN:1884-684X
2187-2805
DOI:10.4190/jjlac.7.163