岩手県雫石町の積雪期において積雪深および林相がイノシシの掘り返しを伴う採食場所選択に与える影響
「摘要」岩手県雫石町において2020年1月から2021年2月の積雪期にイノシシ (Sus scrofa) の足跡を追跡し, 生活痕跡調査および糞内容物調査を行った. 生活痕跡調査で得られた掘り返し跡の分布の有無データを目的変数, 調査区の林相, 調査日の雫石町の積雪深および調査日の年を説明変数として一般化線形モデルを構築した. 糞内容物調査では出現頻度とポイントフレーム法による糞内容物中割合を求めた. その結果, 林相と積雪深を説明変数とするモデルが, 統計モデルの良さを評価するための指標であるAIC (赤池情報量基準) 値が最も低く, ベストモデルであることが示された. このベストモデルでは...
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Published in | 哺乳類科学 Vol. 62; no. 2; pp. 225 - 231 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本哺乳類学会
2022
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Subjects | |
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ISSN | 0385-437X 1881-526X |
DOI | 10.11238/mammalianscience.62.225 |
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Summary: | 「摘要」岩手県雫石町において2020年1月から2021年2月の積雪期にイノシシ (Sus scrofa) の足跡を追跡し, 生活痕跡調査および糞内容物調査を行った. 生活痕跡調査で得られた掘り返し跡の分布の有無データを目的変数, 調査区の林相, 調査日の雫石町の積雪深および調査日の年を説明変数として一般化線形モデルを構築した. 糞内容物調査では出現頻度とポイントフレーム法による糞内容物中割合を求めた. その結果, 林相と積雪深を説明変数とするモデルが, 統計モデルの良さを評価するための指標であるAIC (赤池情報量基準) 値が最も低く, ベストモデルであることが示された. このベストモデルではコナラ (Quercus serrata)・ミズナラ (Q. crispula) を主とする広葉樹林・混交林およびスギ (Cryptomeria japonica) 林が有意に正に, 積雪深が有意に負に影響する説明変数として選択された. 糞内容物では積雪深が30~40cmであった2020年度に堅果類が全ての糞から出現し, 糞内容物中平均割合も78.5%と最も高かった. これらのことから, イノシシは積雪期において堅果類を利用できる広葉樹林を好むことが示唆された. また, 一般化線形モデルの結果から, 積雪深が深くなると掘り返しが困難になり, 落葉広葉樹と比べて積雪深が浅い常緑針葉樹林へと採食場所を移動させることが示唆された. |
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ISSN: | 0385-437X 1881-526X |
DOI: | 10.11238/mammalianscience.62.225 |