在宅脊髄損傷者の食生活と食行動・食態度の指標との関連についての検討
脊髄損傷者は不活動や排尿/排便障害などのため，その食生活の指針は健常者とは異なると考えられる。しかし，日本では脊髄損傷者の食生活状況はよく知られていない。 そこで本研究では，脊髄損傷者の食生活の実態を把握することを目的とし，94名（男性77名，平均年齢45.4（SD 14.5）歳，女性17名，平均年齢45.4（SD 13.1）歳）の脊髄損傷者を対象とした自記式質問紙による食生活調査を実施した。調査項目は，基本属性，生活の質（QOL），健康状態，食行動，食知識，食態度，食スキル，食環境である。 主観的健康観，食関連QOLは良好であったが，28％の対象者に朝食欠食がみられた。食態度は概ね良好であっ...
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| Published in | 栄養学雑誌 Vol. 68; no. 3; pp. 183 - 192 |
|---|---|
| Main Authors | , , , , , |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
2010
日本栄養改善学会 |
| Subjects | |
| Online Access | Get full text |
| ISSN | 0021-5147 1883-7921 |
| DOI | 10.5264/eiyogakuzashi.68.183 |
Cover
| Abstract | 脊髄損傷者は不活動や排尿/排便障害などのため，その食生活の指針は健常者とは異なると考えられる。しかし，日本では脊髄損傷者の食生活状況はよく知られていない。 そこで本研究では，脊髄損傷者の食生活の実態を把握することを目的とし，94名（男性77名，平均年齢45.4（SD 14.5）歳，女性17名，平均年齢45.4（SD 13.1）歳）の脊髄損傷者を対象とした自記式質問紙による食生活調査を実施した。調査項目は，基本属性，生活の質（QOL），健康状態，食行動，食知識，食態度，食スキル，食環境である。 主観的健康観，食関連QOLは良好であったが，28％の対象者に朝食欠食がみられた。食態度は概ね良好であったのに対し，食スキルは必ずしも十分ではなかった。周囲の支援は良好であった。食生活の評価指標としてとりあげた食生活満足度得点，食物摂取頻度得点，食生活セルフ・エフィカシー得点は主観的な健康観，食行動，食態度，食スキル，周囲の支援といった他の変数との間に有意な偏相関を示した。 脊髄損傷者における食生活の検討において，健常な若年成人を対象として開発されたこれらの評価指標の利用可能性が示唆された。 （オンラインのみ掲載） |
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| AbstractList | 「緒言」脊髄損傷者は一瞬にして回復見込みの少ない重度の障害を負うため, 受傷から障害の受容, 社会参加に至るまでの多くの問題に治療, カウンセリング, リハビリテーションなどの様々な分野が協働で対応している. 栄養面では, 栄養摂取不足からの低栄養状態, 低体重, 貧血や褥瘡などの課題に対し, 3食規則正しい食事, 高たんぱく・高繊維食, ミネラルの確保などが必要とされている1～3）. しかし, その根拠や情報は限られており1～3）, 健常者にみる食事摂取基準や食生活指針の検討もなされていない. 脊髄損傷者の場合, 不活動による心身の機能低下から筋委縮, 便秘, 起立性低血圧, 骨粗鬆症など, 機能を使わないことによる廃用症候群におちいる. 生活習慣病の発症を避けることも困難であり, そのリスクの程度も健常者と比較して極めて高い4,5）. 日本パラプレジア医学会（現日本脊髄障害医学会）の外傷性脊髄損傷発生調査6）によると, 受傷平均年齢は48.6歳, その内訳は交通事故や労働災害を原因とする20歳代と転倒などを原因とする高齢者に二極化している. 脊髄損傷者は不活動や排尿/排便障害などのため，その食生活の指針は健常者とは異なると考えられる。しかし，日本では脊髄損傷者の食生活状況はよく知られていない。 そこで本研究では，脊髄損傷者の食生活の実態を把握することを目的とし，94名（男性77名，平均年齢45.4（SD 14.5）歳，女性17名，平均年齢45.4（SD 13.1）歳）の脊髄損傷者を対象とした自記式質問紙による食生活調査を実施した。調査項目は，基本属性，生活の質（QOL），健康状態，食行動，食知識，食態度，食スキル，食環境である。 主観的健康観，食関連QOLは良好であったが，28％の対象者に朝食欠食がみられた。食態度は概ね良好であったのに対し，食スキルは必ずしも十分ではなかった。周囲の支援は良好であった。食生活の評価指標としてとりあげた食生活満足度得点，食物摂取頻度得点，食生活セルフ・エフィカシー得点は主観的な健康観，食行動，食態度，食スキル，周囲の支援といった他の変数との間に有意な偏相関を示した。 脊髄損傷者における食生活の検討において，健常な若年成人を対象として開発されたこれらの評価指標の利用可能性が示唆された。 （オンラインのみ掲載） |
| Author | 横瀬, 道絵 角田, 伸代 樋口, 幸治 佐久間, 肇 稲山, 貴代 加園, 恵三 |
| Author_xml | – sequence: 1 fullname: 加園, 恵三 organization: 城西大学 – sequence: 1 fullname: 樋口, 幸治 organization: 国立障害者リハビリテーションセンター病院 – sequence: 1 fullname: 佐久間, 肇 organization: 国際医療福祉大学三田病院 – sequence: 1 fullname: 横瀬, 道絵 organization: 城西大学 – sequence: 1 fullname: 角田, 伸代 organization: 城西大学 – sequence: 1 fullname: 稲山, 貴代 organization: 首都大学東京 |
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| Copyright | 2010 特定非営利活動法人 日本栄養改善学会 |
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| CorporateAuthor | 城西大学 国立障害者リハビリテーションセンター病院 国際医療福祉大学三田病院 首都大学東京 |
| CorporateAuthor_xml | – name: 国立障害者リハビリテーションセンター病院 – name: 国際医療福祉大学三田病院 – name: 首都大学東京 – name: 城西大学 |
| DOI | 10.5264/eiyogakuzashi.68.183 |
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| Issue | 3 |
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| PublicationYear | 2010 |
| Publisher | 特定非営利活動法人 日本栄養改善学会 日本栄養改善学会 |
| Publisher_xml | – name: 特定非営利活動法人 日本栄養改善学会 – name: 日本栄養改善学会 |
| References | 16) 健康・栄養情報研究会編：国民健康・栄養の現状―平成17年厚生労働省国民健康・栄養調査報告より，p. 201 (2008) 第一出版，東京 1) 佐久間肇：頚髄損傷者の社会参加―健康管理―自己管理，頚髄損傷者のリハビリテーション改訂第2版/二瓶隆一，木村鉄彦，牛山武久，陶山哲夫，飛松好子編著，pp. 248-252 (2006) 共同医書出版社，東京 5) 佐久間肇，中澤公孝，樋口幸治：脊髄損傷者の生活習慣病・二次的障害予防のための適切な運動処方・生活指導に関する研究 (主任研究者 佐久間肇)，pp. 1-24 (2007) 厚生労働省障害保健福祉総合研究事業 7) Levine, A.M., Nash, M.S., Green, B.A., Shea, J.D. and Aronica, M.J.: An examination of dietary intakes and nutritional status of chronic healthy spinal cord injured individuals, Paraplegia, 30, 880-889 (1992 3) 脊損ヘルスケア編集委員会編：脊損ヘルスケア・Q&A編 (2006) 特定非営利活動法人日本せきずい基金，独立行政法人福祉医療機構助成事業 9) Groah, S.L., Nash, M.S., Ljungberg, I.H., Libin, A., Hamm, L.F., Ward, E., Burns, P.A. and Enfields, G.: Nutrient intake and body habitus after spinal cord injury: an analysis by sex and level of injury, J. Spinal Cord Med., 32, 25-33 (2009 10) 武見ゆかり：食行動・食態度の指標に関する検討，若年成人への栄養・食教育の診断・評価に関する総合的研究，厚生科学研究費補助金健康科学総合研究事業 (主任研究者：武見ゆかり)，平成10年度～12年度総合研究報告書，pp. 25-32 (2001 8) Tomey, K.M., Chen, D.M., Wang, X. and Braunschweig, C.L.: Dietary intake and nutritional status of urban community-dwelling men with paraplegia, Arch. Phys. Med. Rehabil., 86, 664-671 (2005 12) 溝口景子，武見ゆかり，足立己幸：若年勤労男性の「仕事意識の良好さ」と食生活ならびに労働生活との関連―都内医療機器メーカー男子社員の事例―，栄養学雑誌，62, 269-283 (2004 13) Prochaska, J.O., DiClemente, C.C. and Norcross, J.C.: In search of how people change, Am. Psychol., 47, 1102-1114 (1992 2) 徳弘昭博：脊髄損傷―日常生活における自己管理のすすめ 第2版，(2001) 医学書院，東京 11) 武見ゆかり，丸山千寿子，山本妙子，朝倉隆司，吉田 亨：若年成人への栄養・食教育の診断・評価に関する総合的研究，厚生科学研究費補助金健康科学総合研究事業 (主任研究者：武見ゆかり)，平成10年度～12年度総合研究報告書，pp. 41-76 (2001 6) 新宮彦助：日本における脊髄損傷疫学調査 第3報 (1990～1992)，日本パラプレジア医学会雑誌，8, 28-29 (1995 15) アイ ビン，星 旦二：高齢者における主観的健康観の有用性に関する研究―日本と中国における研究を中心に，日本公衆衛生雑誌，52, 841-852 (2005 14) 杉澤あつ子，杉澤秀博：健康度自己評価に関する研究の展開―米国の研究事例を中心に，園田恭一，川田智恵子編，健康観の転換―新しい健康理論の展開，pp. 73-83 (1995) 東京大学出版会，東京 4) 鷹野昭士：頚髄損傷の症状と診断―神経症状，頚髄損傷者のリハビリテーション改訂第2版/二瓶隆一，木村鉄彦，牛山武久，陶山哲夫，飛松好子編著，pp. 11-13 (2006) 共同医書出版社，東京 |
| References_xml | – reference: 2) 徳弘昭博：脊髄損傷―日常生活における自己管理のすすめ 第2版，(2001) 医学書院，東京 – reference: 11) 武見ゆかり，丸山千寿子，山本妙子，朝倉隆司，吉田 亨：若年成人への栄養・食教育の診断・評価に関する総合的研究，厚生科学研究費補助金健康科学総合研究事業 (主任研究者：武見ゆかり)，平成10年度～12年度総合研究報告書，pp. 41-76 (2001) – reference: 5) 佐久間肇，中澤公孝，樋口幸治：脊髄損傷者の生活習慣病・二次的障害予防のための適切な運動処方・生活指導に関する研究 (主任研究者 佐久間肇)，pp. 1-24 (2007) 厚生労働省障害保健福祉総合研究事業 – reference: 14) 杉澤あつ子，杉澤秀博：健康度自己評価に関する研究の展開―米国の研究事例を中心に，園田恭一，川田智恵子編，健康観の転換―新しい健康理論の展開，pp. 73-83 (1995) 東京大学出版会，東京 – reference: 15) アイ ビン，星 旦二：高齢者における主観的健康観の有用性に関する研究―日本と中国における研究を中心に，日本公衆衛生雑誌，52, 841-852 (2005) – reference: 13) Prochaska, J.O., DiClemente, C.C. and Norcross, J.C.: In search of how people change, Am. Psychol., 47, 1102-1114 (1992) – reference: 9) Groah, S.L., Nash, M.S., Ljungberg, I.H., Libin, A., Hamm, L.F., Ward, E., Burns, P.A. and Enfields, G.: Nutrient intake and body habitus after spinal cord injury: an analysis by sex and level of injury, J. Spinal Cord Med., 32, 25-33 (2009) – reference: 10) 武見ゆかり：食行動・食態度の指標に関する検討，若年成人への栄養・食教育の診断・評価に関する総合的研究，厚生科学研究費補助金健康科学総合研究事業 (主任研究者：武見ゆかり)，平成10年度～12年度総合研究報告書，pp. 25-32 (2001) – reference: 1) 佐久間肇：頚髄損傷者の社会参加―健康管理―自己管理，頚髄損傷者のリハビリテーション改訂第2版/二瓶隆一，木村鉄彦，牛山武久，陶山哲夫，飛松好子編著，pp. 248-252 (2006) 共同医書出版社，東京 – reference: 12) 溝口景子，武見ゆかり，足立己幸：若年勤労男性の「仕事意識の良好さ」と食生活ならびに労働生活との関連―都内医療機器メーカー男子社員の事例―，栄養学雑誌，62, 269-283 (2004) – reference: 4) 鷹野昭士：頚髄損傷の症状と診断―神経症状，頚髄損傷者のリハビリテーション改訂第2版/二瓶隆一，木村鉄彦，牛山武久，陶山哲夫，飛松好子編著，pp. 11-13 (2006) 共同医書出版社，東京 – reference: 8) Tomey, K.M., Chen, D.M., Wang, X. and Braunschweig, C.L.: Dietary intake and nutritional status of urban community-dwelling men with paraplegia, Arch. Phys. Med. Rehabil., 86, 664-671 (2005) – reference: 16) 健康・栄養情報研究会編：国民健康・栄養の現状―平成17年厚生労働省国民健康・栄養調査報告より，p. 201 (2008) 第一出版，東京 – reference: 3) 脊損ヘルスケア編集委員会編：脊損ヘルスケア・Q&A編 (2006) 特定非営利活動法人日本せきずい基金，独立行政法人福祉医療機構助成事業 – reference: 6) 新宮彦助：日本における脊髄損傷疫学調査 第3報 (1990～1992)，日本パラプレジア医学会雑誌，8, 28-29 (1995) – reference: 7) Levine, A.M., Nash, M.S., Green, B.A., Shea, J.D. and Aronica, M.J.: An examination of dietary intakes and nutritional status of chronic healthy spinal cord injured individuals, Paraplegia, 30, 880-889 (1992) |
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| SubjectTerms | 生活の質 (QOL) 脊髄損傷者 食態度 食行動 |
| Title | 在宅脊髄損傷者の食生活と食行動・食態度の指標との関連についての検討 |
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