硬膜外自家血注入療法が奏功した外転神経麻痺を伴う脳脊髄液漏出症の1例

硬膜外自家血注入療法が奏功した外転神経麻痺を伴う脳脊髄液漏出症の1例を報告する.症例は40 歳,女性.嘔吐を伴う起立性頭痛で近医を受診し,片頭痛と診断されたが,その 3 週間後に複視が出現した.頭部造影MRIで硬膜下腔のびまん性拡大,びまん性硬膜造影所見を認めた.低髄液圧症を含めた脳脊髄液漏出症の疑いで精査・加療目的で当院脳神経外科へ紹介され,当科受診となった.視力は右(1.0×-18.00D=Cyl-1.00D Ax180°),左(1.0×-19.00D),眼圧は右13 mmHg,左15 mmHg,前眼部・中間透光体,眼底に異常所見はなかった.眼位検査では遠見25 prism diopter...

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Published in神経眼科 Vol. 40; no. 4; pp. 383 - 389
Main Authors 家木, 良彰, 小野, 貴暁, 春石, 和子, 高井, 洋樹, 後藤, 克聡, 桐生, 純一, 宇野, 昌明, 三木, 淳司, 荒木, 俊介
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本神経眼科学会 25.12.2023
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ISSN0289-7024
2188-2002
DOI10.11476/shinkeiganka.40.383

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Summary:硬膜外自家血注入療法が奏功した外転神経麻痺を伴う脳脊髄液漏出症の1例を報告する.症例は40 歳,女性.嘔吐を伴う起立性頭痛で近医を受診し,片頭痛と診断されたが,その 3 週間後に複視が出現した.頭部造影MRIで硬膜下腔のびまん性拡大,びまん性硬膜造影所見を認めた.低髄液圧症を含めた脳脊髄液漏出症の疑いで精査・加療目的で当院脳神経外科へ紹介され,当科受診となった.視力は右(1.0×-18.00D=Cyl-1.00D Ax180°),左(1.0×-19.00D),眼圧は右13 mmHg,左15 mmHg,前眼部・中間透光体,眼底に異常所見はなかった.眼位検査では遠見25 prism diopter(PD)の内斜視,近見は16PDの内斜視,Hess赤緑試験で右眼の外転制限がみられた.CTミエログラフィーで髄液漏出像がみられ,脳脊髄液漏出症と低髄液圧症に伴う外転神経麻痺と診断された.初診時から2週間後,頭痛は消失するも外転神経麻痺が残存したため,初診時から1か月後に硬膜外自家血注入療法が行われた.治療1か月後,複視は消失,眼位は遠見・近見ともに4PDの内斜位,右眼の外転制限も改善した.起立性頭痛を伴う外転神経麻痺をみた場合には,脳脊髄液漏出症も念頭に置く必要があり,その治療には硬膜外自家血注入療法が有用であると考えられた.
ISSN:0289-7024
2188-2002
DOI:10.11476/shinkeiganka.40.383