頭頸部がん術後せん妄に対する睡眠マネジメント効果の検討

術後せん妄対策はどの病院でも大きな課題である. しかし, その病態・原因は多岐にわたり明確なエビデンスの蓄積は少なく病院ごとに取り組んでいるのが現状である. 頭頸部がん術後せん妄では気管カニューレの自己抜去, 吻合血管の血栓形成などを引き起こし治療成績低下や致死的合併症の直接的原因にもなり得る. 当院では, 2013年6月以降, 頭頸部外科医, 精神腫瘍科医, 病棟看護師, リエゾンナースらで共同して周術期の新たな睡眠対策を取ることでせん妄の減少および軽症化を進めてきた. ベンゾジアゼピン系睡眠薬を徹底的に排除し代わりに鎮静系抗うつ薬とラメルテオン, スボレキサントといった新規睡眠薬を積極的に...

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Published in日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 121; no. 1; pp. 31 - 37
Main Authors 松本, 晃明, 今井, 篤志, 木谷, 卓史, 飯田, 善幸, 上條, 朋之, 長岡, 真人, 鬼塚, 哲郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会 01.01.2018
日本耳鼻咽喉科学会
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ISSN0030-6622
1883-0854
DOI10.3950/jibiinkoka.121.31

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Summary:術後せん妄対策はどの病院でも大きな課題である. しかし, その病態・原因は多岐にわたり明確なエビデンスの蓄積は少なく病院ごとに取り組んでいるのが現状である. 頭頸部がん術後せん妄では気管カニューレの自己抜去, 吻合血管の血栓形成などを引き起こし治療成績低下や致死的合併症の直接的原因にもなり得る. 当院では, 2013年6月以降, 頭頸部外科医, 精神腫瘍科医, 病棟看護師, リエゾンナースらで共同して周術期の新たな睡眠対策を取ることでせん妄の減少および軽症化を進めてきた. ベンゾジアゼピン系睡眠薬を徹底的に排除し代わりに鎮静系抗うつ薬とラメルテオン, スボレキサントといった新規睡眠薬を積極的に使用した. この対策によるせん妄抑制効果について65歳以上かつ6時間以上の手術患者を対象に術後せん妄の発生状況について検討した. 対策前のせん妄発症率は29.3% (92例中27例), 対策後の発症率は22.7% (66例中15例) で有意差は認めなかったが, せん妄持続期間は対策前で3.96日 (1~12日) に対して対策後では平均2.06日 (1~5日) と有意差をもって減少させることができた. せん妄対策は単一側面から対策できるものではなく, 多方面からのアプローチが重要である. その中でベンゾジアゼピン系睡眠薬を廃した新たな「睡眠マネジメント」はせん妄対策に有効な手段の一つであると考える.
ISSN:0030-6622
1883-0854
DOI:10.3950/jibiinkoka.121.31