膵がん高リスク所見を考慮した腹部超音波検診

目的:腹部超音波検診による膵がん早期発見には,膵がん高リスク所見である膵嚢胞性病変や主膵管拡張を確実に拾い上げることが重要である.自施設での超音波検診の現状把握と精検結果に基づいた超音波検診画像を振り返ることにより今後の膵がん超音波検診の課題を検討した.方法:2016年4月から2021年3月に当センターにて実施した腹部超音波検査件数のべ33,113件の実質受診者15,784名(男性9,198名,女性6,586名),平均年齢48.4±9.7歳を対象とし,自施設検査レポート,精検結果について後ろ向きに調査した.結果:5年間で膵病変として指摘した症例は389名(有所見率2.46%)であり,初回指摘時...

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Published in人間ドック Vol. 38; no. 4; pp. 589 - 597
Main Authors 尾上, 秀彦, 渡邉, 早苗, 山本, あかね, 長谷部, 靖子, 松木, 直子, 八木, 完
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本人間ドック学会 2023
日本人間ドック学会
Subjects
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ISSN1880-1021
2186-5027
DOI10.11320/ningendock.38.589

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Summary:目的:腹部超音波検診による膵がん早期発見には,膵がん高リスク所見である膵嚢胞性病変や主膵管拡張を確実に拾い上げることが重要である.自施設での超音波検診の現状把握と精検結果に基づいた超音波検診画像を振り返ることにより今後の膵がん超音波検診の課題を検討した.方法:2016年4月から2021年3月に当センターにて実施した腹部超音波検査件数のべ33,113件の実質受診者15,784名(男性9,198名,女性6,586名),平均年齢48.4±9.7歳を対象とし,自施設検査レポート,精検結果について後ろ向きに調査した.結果:5年間で膵病変として指摘した症例は389名(有所見率2.46%)であり,初回指摘時の検診所見別要精検者数(率)は主膵管拡張111名(0.70%),膵充実性病変25名(0.16%),膵嚢胞性病変167名(1.06%),その他10名(0.06%)であった.発見膵がんは4名,がん発見率は0.025%,陽性反応的中度は1.299%であった.膵がんはStage IA~IIAであり,検診所見は全症例で主膵管拡張を認め,膵充実性病変が2名であった.このうちの1名は逐年受診者で精査の結果異常と判断されたが,2年後に膵がんと診断された.精検受診した膵嚢胞性病変136名のうち,膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm: IPMN)が58名(42.6%),膵嚢胞が49名(36.0%)であった.結論:今回発見できた比較的早期の膵がんの超音波所見は,膵がん高リスク所見である主膵管拡張と充実性病変であった.逐年受診者では精査で異常の判定であっても,継続して所見が認められる場合には再度精査を勧めることも必要である.
ISSN:1880-1021
2186-5027
DOI:10.11320/ningendock.38.589