粘土でロドプシンをつくる

「1. はじめに」 タンパク質のさまざまな機能を人工的に再現することは, 実用化をめざすだけでなく, その機能発現機構の本質を見きわめるためにも重要である. 「百聞は一見に如かず」といわれるように, 光は生物にとって最も重要な外部刺激の1つである. その情報処理の入り口を担っているのが視物質ロドプシンである. われわれの視覚では, 色覚ではたらく赤, 青, 緑の3色の光をそれぞれ吸収する錐体視物質が存在するが, これらはすべて光受容分子として11-cis型レチナールを結合している(図1a, b). レチナールは, タンパク質中のリジン側鎖とプロトン化シッフ塩基結合を形成すると, 吸収極大波長が...

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Published in生物物理 Vol. 48; no. 5; pp. 284 - 286
Main Authors 神取, 秀樹, 古谷, 祐詞
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本生物物理学会 2008
日本生物物理学会
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ISSN0582-4052
1347-4219
DOI10.2142/biophys.48.284

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Summary:「1. はじめに」 タンパク質のさまざまな機能を人工的に再現することは, 実用化をめざすだけでなく, その機能発現機構の本質を見きわめるためにも重要である. 「百聞は一見に如かず」といわれるように, 光は生物にとって最も重要な外部刺激の1つである. その情報処理の入り口を担っているのが視物質ロドプシンである. われわれの視覚では, 色覚ではたらく赤, 青, 緑の3色の光をそれぞれ吸収する錐体視物質が存在するが, これらはすべて光受容分子として11-cis型レチナールを結合している(図1a, b). レチナールは, タンパク質中のリジン側鎖とプロトン化シッフ塩基結合を形成すると, 吸収極大波長が紫外部から可視部にシフトする(有機溶媒中では酸を加えることにより380nmから450nm程度にシフトする). しかし, 同じ色素分子を結合しているにもかかわらず, なぜ3色の色を呈することができるのであろうか? これまでの研究により, レチナール周辺のアミノ酸残基や塩化物イオンが, レチナールの電子状態の制御に関係していることが明らかにされてきている1).
ISSN:0582-4052
1347-4219
DOI:10.2142/biophys.48.284