腫瘍内微小環境の能動的制御に基づくsiRNAデリバリー技術の開発とがん治療への展開

「1. はじめに」 RNA interference(RNAi)は短い二本鎖のRNAがその相補的な配列を持つ遺伝子の発現を選択的に抑制する現象である. 1, 2)RNAiを誘導するsiRNAはこれまで医薬品開発の対象となり得なかったタンパクの発現抑制が可能であることから, がんやウイルス感染など病因タンパクの発現の亢進が知られる疾患に対する新たな治療薬としても期待されている. しかし, siRNAは生体内で不安定でかつ生体膜不透過性であるため, 疾患部位の標的細胞内まで効果的に送達するキャリアシステムの開発が必須となっている. これまでのsiRNAのdrug delivery system(D...

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Published inYAKUGAKU ZASSHI Vol. 133; no. 3; pp. 379 - 386
Main Authors 際田, 弘志, 石田, 竜弘
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本薬学会 01.03.2013
日本薬学会
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ISSN0031-6903
1347-5231
DOI10.1248/yakushi.12-00239-5

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Summary:「1. はじめに」 RNA interference(RNAi)は短い二本鎖のRNAがその相補的な配列を持つ遺伝子の発現を選択的に抑制する現象である. 1, 2)RNAiを誘導するsiRNAはこれまで医薬品開発の対象となり得なかったタンパクの発現抑制が可能であることから, がんやウイルス感染など病因タンパクの発現の亢進が知られる疾患に対する新たな治療薬としても期待されている. しかし, siRNAは生体内で不安定でかつ生体膜不透過性であるため, 疾患部位の標的細胞内まで効果的に送達するキャリアシステムの開発が必須となっている. これまでのsiRNAのdrug delivery system(DDS)研究は, siRNAを運ぶナノキャリア(送り手)に焦点を当てた研究が主流となっている. 3-5)しかし, ナノキャリアは血流にのって腫瘍組織へ到達するため, 腫瘍内への移行はおのずと腫瘍内血管ネットワークに依存する. ところが, 腫瘍内の無秩序な血管パターンや高い間質圧が原因となり, 腫瘍深部の細胞までsiRNAを送達させることは現状のDDSでは困難である.
ISSN:0031-6903
1347-5231
DOI:10.1248/yakushi.12-00239-5