処方の最適化による粉末製剤化医薬品の経鼻吸収性の改善─製剤添加物による吸収性の精密制御の可能性

「1. はじめに」近年, 全身作用を期待する薬物の投与部位として鼻腔が注目されている. 鼻腔内投与は経口投与と比較して, 薬物吸収が良好かつ速やかであること, 肝初回通過効果を回避できることから, 制吐剤や疼痛剤などの緊急性を要する製剤や肝初回通過効果の影響を受け易い薬物の代替投与部位として期待されている. さらに, 非侵襲的で注射剤のような痛みを伴わず, 寝たきり高齢者など, 経口製剤の服用が難しい患者に対して, 介護者による投与も可能である. 欧米では, 制吐剤のグラニセトロン, オピオイド系鎮痛薬であるモルヒネやフェンタニル, 骨粗鬆薬のカルシトニンなどが市販又は開発中である. しかしな...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published inYAKUGAKU ZASSHI Vol. 138; no. 12; pp. 1467 - 1472
Main Author 田中, 晶子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本薬学会 01.12.2018
日本薬学会
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0031-6903
1347-5231
DOI10.1248/yakushi.18-00157

Cover

More Information
Summary:「1. はじめに」近年, 全身作用を期待する薬物の投与部位として鼻腔が注目されている. 鼻腔内投与は経口投与と比較して, 薬物吸収が良好かつ速やかであること, 肝初回通過効果を回避できることから, 制吐剤や疼痛剤などの緊急性を要する製剤や肝初回通過効果の影響を受け易い薬物の代替投与部位として期待されている. さらに, 非侵襲的で注射剤のような痛みを伴わず, 寝たきり高齢者など, 経口製剤の服用が難しい患者に対して, 介護者による投与も可能である. 欧米では, 制吐剤のグラニセトロン, オピオイド系鎮痛薬であるモルヒネやフェンタニル, 骨粗鬆薬のカルシトニンなどが市販又は開発中である. しかしながら, 国内の経鼻投与製剤の多くは局所作用を目的とした製剤で, 花粉症などの鼻炎を対象とする抗アレルギー薬である. 全身作用を目的とした製剤としては, 中枢性崩尿症治療薬のデスモプレシン酢酸塩, 子宮内膜症治療薬のブセレリン酢酸塩などが上市されているが, いまだ実用化された製剤は少ないのが現状である.
ISSN:0031-6903
1347-5231
DOI:10.1248/yakushi.18-00157