一酸化窒素から亜酸化窒素への変換:一酸化窒素還元酵素の構造と機能
「1. はじめに」脱窒とは, 硝酸塩(NO3-), 亜硝酸塩(NO2-)などの水溶性の硝酸態窒素を, 亜酸化窒素(N2O), 分子状窒素(N2)などの気体状窒素化合物まで段階的に還元して大気中に放出する現象を指す. 脱窒菌とよばれる一群の細菌類は, NO3-からN2までの脱窒能を有しており, 地球上の窒素サイクルの中で重要な役割を担っている1). これら細菌にとって脱窒の生理的な役割は, 嫌気条件下においてNO3-を最終電子受容体とする, いわゆる硝酸塩呼吸系(分子状酸素以外を最終電子受容体とする嫌気呼吸の1つ)として機能していることである. すなわち, 脱窒は生体エネルギー(ATP)の獲得系...
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| Published in | 生物物理 Vol. 44; no. 4; pp. 155 - 160 |
|---|---|
| Main Authors | , |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
一般社団法人 日本生物物理学会
2004
日本生物物理学会 |
| Online Access | Get full text |
| ISSN | 0582-4052 1347-4219 |
| DOI | 10.2142/biophys.44.155 |
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| Summary: | 「1. はじめに」脱窒とは, 硝酸塩(NO3-), 亜硝酸塩(NO2-)などの水溶性の硝酸態窒素を, 亜酸化窒素(N2O), 分子状窒素(N2)などの気体状窒素化合物まで段階的に還元して大気中に放出する現象を指す. 脱窒菌とよばれる一群の細菌類は, NO3-からN2までの脱窒能を有しており, 地球上の窒素サイクルの中で重要な役割を担っている1). これら細菌にとって脱窒の生理的な役割は, 嫌気条件下においてNO3-を最終電子受容体とする, いわゆる硝酸塩呼吸系(分子状酸素以外を最終電子受容体とする嫌気呼吸の1つ)として機能していることである. すなわち, 脱窒は生体エネルギー(ATP)の獲得系と共役している. 近年まで, 脱窒は細菌類(原核生物)に固有の能力とされてきたが, 真核生物であるカビや酵母の中にも(N2Oまでだが)脱窒能を有するものが多数存在することが明らかにされた2)-4). 興味深いことに, これら真核生物でも脱窒は細菌類と同様に嫌気呼吸システムとして機能している5). |
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| ISSN: | 0582-4052 1347-4219 |
| DOI: | 10.2142/biophys.44.155 |