食虫植物における形態複雑化メカニズムの解明

「1. 食虫植物の形態進化」食虫植物は, 小昆虫を主とした動物を"食べる"ことで貧栄養環境への進出を果たした植物である. 25万種とも30万種とも言われる多様な被子植物のなかで, 現在までにおよそ700種が食虫植物として認識され, それらすべてが葉を使って捕虫を行う. 罠の性状は分類群により様々であり, たとえばモウセンゴケ属は葉の表面に無数の腺毛を備え, トリモチ式に虫を捕らえる. 初夏の園芸店で一際目を引くハエトリソウは, 獲物との接触刺激を感知し, 挟み込み式に虫を捕らえる. タヌキモ属は水生の食虫植物であり, 袋状の葉を減圧して捕虫に備え, 獲物を周囲の水ごと吸い込...

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Published in生物物理 Vol. 56; no. 5; pp. 255 - 261
Main Authors 福島, 健児, 藤田, 浩徳
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本生物物理学会 2016
日本生物物理学会
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ISSN0582-4052
1347-4219
DOI10.2142/biophys.56.255

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Summary:「1. 食虫植物の形態進化」食虫植物は, 小昆虫を主とした動物を"食べる"ことで貧栄養環境への進出を果たした植物である. 25万種とも30万種とも言われる多様な被子植物のなかで, 現在までにおよそ700種が食虫植物として認識され, それらすべてが葉を使って捕虫を行う. 罠の性状は分類群により様々であり, たとえばモウセンゴケ属は葉の表面に無数の腺毛を備え, トリモチ式に虫を捕らえる. 初夏の園芸店で一際目を引くハエトリソウは, 獲物との接触刺激を感知し, 挟み込み式に虫を捕らえる. タヌキモ属は水生の食虫植物であり, 袋状の葉を減圧して捕虫に備え, 獲物を周囲の水ごと吸い込んでしまう. ウツボカズラ属やサラセニア属も袋型の捕虫葉を作るが, こちらは陸生であり, 落とし穴式に虫を捕らえる. 分子系統解析の結果をもとに, これらの食虫植物の祖先は光合成に特化した扁平な葉を持っていたことがわかっている.
ISSN:0582-4052
1347-4219
DOI:10.2142/biophys.56.255