感染症制御における野生動物医学—新たな衛生動物を標的にした視点

「はじめに」動物の感染症あるいは病原体伝播の効果的な予防・制御の基本的な手段は, ヒトあるいは植物の場合と同様に, (輸入)検疫と防疫に大別される. そして, 厳格な人的管理下にある家畜・家禽や飼育の歴史が深い愛玩動物(以下, 伴侶動物; イヌとネコがイメージされるが, 欧米ではウマも包含)では, 両手段のコンビネーションで一定効果をあげてきた. しかし, 野生動物および飼育の歴史が浅く野生種に近い動物(以下, エキゾチック動物)などの多くが法制度に基づく検疫対象ではないこともあって, 病原体の顕在化や感染症の発生の場合, 制御の手段は防疫に委ねられる. その防疫の理論と実際では, 獣医学・獣...

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Published inMedical Entomology and Zoology Vol. 71; no. 3; pp. 171 - 176
Main Author 浅川, 満彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本衛生動物学会 25.09.2020
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ISSN0424-7086
2185-5609
DOI10.7601/mez.71.171

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Summary:「はじめに」動物の感染症あるいは病原体伝播の効果的な予防・制御の基本的な手段は, ヒトあるいは植物の場合と同様に, (輸入)検疫と防疫に大別される. そして, 厳格な人的管理下にある家畜・家禽や飼育の歴史が深い愛玩動物(以下, 伴侶動物; イヌとネコがイメージされるが, 欧米ではウマも包含)では, 両手段のコンビネーションで一定効果をあげてきた. しかし, 野生動物および飼育の歴史が浅く野生種に近い動物(以下, エキゾチック動物)などの多くが法制度に基づく検疫対象ではないこともあって, 病原体の顕在化や感染症の発生の場合, 制御の手段は防疫に委ねられる. その防疫の理論と実際では, 獣医学・獣医療分野では野生動物医学 Zoo and Wildlife Medicine で蓄積された情報が基盤となることが期待されるが, 関連学会が日本で創設されて四半世紀程であり, まだまだ発展途上の感がある.
ISSN:0424-7086
2185-5609
DOI:10.7601/mez.71.171