対側閉塞を伴う高度石灰化内頸動脈狭窄症に対して段階的血行再建術が有効だった1 例

症例は73 歳の男性.めまいを契機に無症候性ラクナ梗塞を指摘された.精査により血行力学的脳虚血を伴う左内頸動脈閉塞と右内頸動脈狭窄の合併と診断された.右後交通動脈は無形成で,右後頭動脈と椎骨動脈分枝の吻合があった.無症候であるが内科的治療の予後が不良な病態であり血行再建術を計画した.狭窄部は高度石灰化を伴うため,ステント留置術より内膜剝離術を選択した.しかし本例は対側内頸動脈閉塞のうえに後交通動脈は無形成のため術中脳虚血を生じる可能性,さらに術後過灌流を生じやすいハイリスク症例と考えられた.そこで内膜剝離術前に浅側頭動脈-中大脳動脈吻合術を先行させた.結果,内膜剝離術中に脳虚血を生じることなく...

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Published in脳卒中 Vol. 38; no. 2; pp. 86 - 91
Main Authors 伊藤, 英道, 池田, 哲也, 大塩, 恒太郎, 田中, 雄一郎, 内田, 将司, 川口, 公悠樹, 佐瀬, 泰玄, 榊原, 陽太郎, 高砂, 浩史
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本脳卒中学会 2016
日本脳卒中学会
Subjects
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ISSN0912-0726
1883-1923
DOI10.3995/jstroke.10347

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Summary:症例は73 歳の男性.めまいを契機に無症候性ラクナ梗塞を指摘された.精査により血行力学的脳虚血を伴う左内頸動脈閉塞と右内頸動脈狭窄の合併と診断された.右後交通動脈は無形成で,右後頭動脈と椎骨動脈分枝の吻合があった.無症候であるが内科的治療の予後が不良な病態であり血行再建術を計画した.狭窄部は高度石灰化を伴うため,ステント留置術より内膜剝離術を選択した.しかし本例は対側内頸動脈閉塞のうえに後交通動脈は無形成のため術中脳虚血を生じる可能性,さらに術後過灌流を生じやすいハイリスク症例と考えられた.そこで内膜剝離術前に浅側頭動脈-中大脳動脈吻合術を先行させた.結果,内膜剝離術中に脳虚血を生じることなく,また段階的な血行再建により術後の過灌流症候群を併発せずに周術期管理が容易であった.本例のような血行動態を有する例は,浅側頭動脈-中大脳動脈吻合術を内膜剝離術に先行させることも考慮すべきである.
ISSN:0912-0726
1883-1923
DOI:10.3995/jstroke.10347