脊髄再生の試みと現状

急性脊髄損傷は日本では年間100万人あたり40.2人と推定され(Shingu H et al, 1995)その予防, 治療は大きな課題である. 一方, 慢性の圧迫性脊髄障害として頸椎症性脊髄症, 後縦靱帯骨化症などがある. それらの除圧術の成績はおよそ8割の例で少なくとも何らかの改善がみられるが, なお「正常レベル」に達しない例も多い. その理由として脊髄の非可逆性変化がいわれているが, これに対処する方法は開発されていない. これらの慢性圧迫性脊髄疾患は高齢化に伴い増加すると考えられ, 大きな課題である. 20世紀初頭のRamon y Cajal以来, ヒトを含めた哺乳動物の脊髄など中枢神経...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 42; no. 1; pp. 45 - 49
Main Authors 星地, 亜都司, 緒方, 徹, 山本, 直哉, 中福, 雅人, 中村, 耕三, 三浦, 俊樹, 荒居, 聖子, 田中, 栄, 山本, 真一, 大堀, 靖夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本リハビリテーション医学会 2005
日本リハビリテーション医学会
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ISSN0034-351X
1880-778X
DOI10.2490/jjrm1963.42.45

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Summary:急性脊髄損傷は日本では年間100万人あたり40.2人と推定され(Shingu H et al, 1995)その予防, 治療は大きな課題である. 一方, 慢性の圧迫性脊髄障害として頸椎症性脊髄症, 後縦靱帯骨化症などがある. それらの除圧術の成績はおよそ8割の例で少なくとも何らかの改善がみられるが, なお「正常レベル」に達しない例も多い. その理由として脊髄の非可逆性変化がいわれているが, これに対処する方法は開発されていない. これらの慢性圧迫性脊髄疾患は高齢化に伴い増加すると考えられ, 大きな課題である. 20世紀初頭のRamon y Cajal以来, ヒトを含めた哺乳動物の脊髄など中枢神経組織は自己再生, 修復能力を失っていると長く信じられてきた1). しかし, 近年, 自己複製能と多分化能を併せ持つ神経幹細胞が成体中枢神経系のさまざまな領域に残存していることが明らかにされ, 少なくとも, 脳内の一部の領域では, 成体でも生涯にわたって持続的なニューロンの新生が起こっていることが示されている.
ISSN:0034-351X
1880-778X
DOI:10.2490/jjrm1963.42.45