咀嚼筋間隙膿瘍・細菌性髄膜炎から海綿静脈洞血栓症を呈した1例

症例は77歳の女性。左上顎犬歯の破折を契機に食事が摂れなくなり,7日後に37℃台の発熱及び歩行時のふらつきによる転倒を主訴に当院救急外来を受診。髄液細胞数の増加及び脳MRIでの咀嚼筋間隙の膿瘍形成の所見から,細菌性髄膜炎を合併した咀嚼筋間隙膿瘍と診断。抗生剤投与により炎症所見は改善したが,入院7日目に両眼球突出を伴った全方向性の眼球運動障害が出現。D-dimerの上昇,頭部造影CTでの上眼静脈の造影欠損から,海綿静脈洞血栓症と診断。抗生剤投与・膿瘍の穿刺排膿に加えて抗凝固療法を行なうことで,炎症所見及び海綿静脈洞血栓症による眼球運動障害は改善を認め,後遺症なく退院した。海綿静脈洞血栓症は,抗生...

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Published in日本農村医学会雑誌 Vol. 65; no. 2; pp. 261 - 267
Main Authors 町田, 明, 大津, 信一, 小寺, 実, 高島, 実, 井上, 千秋, 石原, 正一郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本農村医学会 31.07.2016
日本農村医学会
Subjects
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ISSN0468-2513
1349-7421
DOI10.2185/jjrm.65.261

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Summary:症例は77歳の女性。左上顎犬歯の破折を契機に食事が摂れなくなり,7日後に37℃台の発熱及び歩行時のふらつきによる転倒を主訴に当院救急外来を受診。髄液細胞数の増加及び脳MRIでの咀嚼筋間隙の膿瘍形成の所見から,細菌性髄膜炎を合併した咀嚼筋間隙膿瘍と診断。抗生剤投与により炎症所見は改善したが,入院7日目に両眼球突出を伴った全方向性の眼球運動障害が出現。D-dimerの上昇,頭部造影CTでの上眼静脈の造影欠損から,海綿静脈洞血栓症と診断。抗生剤投与・膿瘍の穿刺排膿に加えて抗凝固療法を行なうことで,炎症所見及び海綿静脈洞血栓症による眼球運動障害は改善を認め,後遺症なく退院した。海綿静脈洞血栓症は,抗生剤の発達により現在では発生頻度は減少しているものの予後不良の疾患であり,早期診断・治療が重要である。
ISSN:0468-2513
1349-7421
DOI:10.2185/jjrm.65.261