膵がんの発生進展を制御するエピゲノム修飾酵素

エピゲノムとは,様々な細胞外環境に応答しつつ遺伝子の転写を調節している可逆的な発現制御状態の総称である.そのシステムはDNAメチル化修飾,ヒストン修飾,クロマチン構造変化などを担う数多くの酵素・分子群により複雑かつ巧妙に調節される.エピゲノム制御はゲノム変異のような塩基配列自体の変化を介さないことが前提だが,次世代シークエンス解析は「エピゲノムを調節する分子自体のゲノム変異」という一見逆説的な興味深い知見をもたらした.さらに“がん細胞特有なエピゲノム”が俯瞰できるようになって悪性形質との関連が解析され,膵がんにおけるエピゲノムの役割も着実に解明されつつある.本章ではヒストン脱メチル化酵素KDM...

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Published in膵臓 Vol. 31; no. 1; pp. 69 - 75
Main Authors 立石, 敬介, 小池, 和彦, 山本, 恵介
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本膵臓学会 25.02.2016
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ISSN0913-0071
1881-2805
DOI10.2958/suizo.31.69

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Summary:エピゲノムとは,様々な細胞外環境に応答しつつ遺伝子の転写を調節している可逆的な発現制御状態の総称である.そのシステムはDNAメチル化修飾,ヒストン修飾,クロマチン構造変化などを担う数多くの酵素・分子群により複雑かつ巧妙に調節される.エピゲノム制御はゲノム変異のような塩基配列自体の変化を介さないことが前提だが,次世代シークエンス解析は「エピゲノムを調節する分子自体のゲノム変異」という一見逆説的な興味深い知見をもたらした.さらに“がん細胞特有なエピゲノム”が俯瞰できるようになって悪性形質との関連が解析され,膵がんにおけるエピゲノムの役割も着実に解明されつつある.本章ではヒストン脱メチル化酵素KDM6Bと膵がんの浸潤能・腫瘍形成能の関連に焦点をあてる.今後は膵がん特異的なエピゲノム制御メカニズムを明らかにすることで,診断・治療における新たな標的化戦略を提示することが可能になると考えられる.
ISSN:0913-0071
1881-2805
DOI:10.2958/suizo.31.69