妊娠期の母体ストレスと脳機能形成異常

「はじめに」 妊娠中の低栄養を含む様々なストレスへの曝露が胎児の発育, および生後の糖尿病や高血圧, 虚血性心疾患など生活習慣病の発症素因と関わっていることが示唆されている. SusserやSt Clairらは妊娠中に低栄養状態に曝されると, 児の統合失調症のリスクが高くなると報告しており, 胎生期の低栄養ストレスと精神疾患発症との関連を指摘している. 日本の低出生体重児の割合は2013年時点で9.6%となっており, OECD加盟国の平均値の6.6%よりはるかに高い状況が続いている. 低出生体重児の割合の増加には様々な要因があげられるが, 日本では女性のやせ願望もその背景にあると考えられている...

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Published in日本衛生学雑誌 Vol. 71; no. 3; pp. 188 - 194
Main Authors 宇田川, 潤, 日野, 広大
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人日本衛生学会 2016
日本衛生学会
Subjects
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ISSN0021-5082
1882-6482
DOI10.1265/jjh.71.188

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Summary:「はじめに」 妊娠中の低栄養を含む様々なストレスへの曝露が胎児の発育, および生後の糖尿病や高血圧, 虚血性心疾患など生活習慣病の発症素因と関わっていることが示唆されている. SusserやSt Clairらは妊娠中に低栄養状態に曝されると, 児の統合失調症のリスクが高くなると報告しており, 胎生期の低栄養ストレスと精神疾患発症との関連を指摘している. 日本の低出生体重児の割合は2013年時点で9.6%となっており, OECD加盟国の平均値の6.6%よりはるかに高い状況が続いている. 低出生体重児の割合の増加には様々な要因があげられるが, 日本では女性のやせ願望もその背景にあると考えられている. これらの疫学研究は, 日本において今後生活習慣病発症率増加の可能性を予測させるものであり, 早急に対応が必要と思われる. ところで近年, 低栄養だけでなく母体の肥満や感染症, あるいは精神的ストレスも精神疾患や自閉症などの発達障害の発症率を増加させる原因の一つとして考えられるようになってきた.
ISSN:0021-5082
1882-6482
DOI:10.1265/jjh.71.188